「正式に発達障害の診断をもらったのは2016年の秋です。検査した結果、発達障害がかなり強く出ている数字だったのですが、病院の先生は『よくこれで今までやってきたね』って言っていましたね。自分の場合は年を重ねるごとに学習していきました。発達障害とわかってからは、『あ、これはもう自分でコントロールすればいいんだ』と割り切ることができました」(金山氏)
金山氏は「こうすれば自分の気持ちが荒れなくて済む」という、落ち着く術を日々の仕事の中で覚え、自らの「取扱説明書」を作るように処世術を学んでいったという。
「今は穏やかに仕事に取り組んでいます。マニュアル作成のような仕事は、アスペルガー症候群にとっては実力を発揮することができます。また、自分で『自分で納得するまで追求しなくても、この段階で終結していればいい仕事なんだ』ということをコントロールできるようになりました。初めてのところに行ったら、『あー、ちょっとあの人変わってるな』と思われる程度に自分を抑えるようコントロールをしています」(金山氏)
従来は「身体障害」が中心だった雇用に、「発達障害」の人が入ってくるということで、企業としても今までのマネジメント手法では確実に追いつかなくなってきている。
障害者雇用は、基本的には障害者手帳を持っている人のみが対象となる。発達障害の診断を下されても、手帳を持っていない人もいる一方で、自分から会社へはなかなか言いづらい状況もあり、認知されていないケースもあるとのことだ。
「私の場合は、目標になる上司がいたわけですよ。非常にかわいがってくれたんです。懐が深く、いろいろなことを教えてくれたんですね。だからその人の下にいたりその人としゃべれているうちは、穏やかに過ごすことができましたね」(金山氏)
多様性に対応できる組織づくり
そんな中、プラスハーティは、金山さんのような自ら障害を抱える社員がほかの社員をサポートしていることもあり、安心して仕事ができる環境づくりが可能だとのことだ。
「アスペルガー症候群の方は集中力に長けているところもあり、職種によってはイノベーションを起こす可能性もあります。そういった人を活かすことができないのはもったいないと考えます。そうした人材を活かせなければ、結局は組織マネジメントがうまくできていないということになります。
今の組織はすでに出来上がったものを維持することに長けた人たちが大勢を占めています。この状況を打破するためには、常識にとらわれない発想ができる人や、さまざまな部分で振り切っている人たちが、しっかり力を発揮できる環境が必要であり、そういう受け皿を作っていかなければならないと思っています」(岡本氏)
岡本氏は、発達障害などの個性を持つ障害者の人が組織の中で力を出せずに評価が下がってしまうのは、企業にとってもマイナスだと考えている。イノベーションを起こすためにも、うまくマネジメントしていく能力を持っている人が管理職になれば、会社にとってもプラスになるのではないかと述べている。
NTTドコモという巨大企業の未来は、こういった多様性に対応できる組織づくりの成功がカギを握っているのかもしれない。
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