「発達障害の人」の力を引き出す職場の"視点" ドコモ子会社の取り組みを訪ねる

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さらに、いままでの「身体障害者」「知的障害者」に加えて、「精神障害者」も雇用義務の対象となり、今年の4月からは「精神障害者」が算定基礎の対象に加わった。ちなみに「発達障害」は精神障害に含まれているため、今回から対象になる。

プラスハーティは、重度の知的障害者を中心に採用するとともに、グループ各社の障害者雇用・定着を支援するために設立された。ほかの企業では雇用が難しいという方たちを採用している。

その背景には、「個人ではなくチームで取り組めば、さまざまな作業が可能になる」というコンセプトがあるという。また、同社ではほかの会社が障害者雇用をしていくうえでのサポート業務も行っており、本人や上司、同僚などに対してのグループ会社の相談窓口も作っている。

そこで業務運営部担当部長の岡本孝伸さん(46)に、発達障害者の雇用と活用について、話を聞いてみた。岡本さんは2009年から他社の障害者雇用に感化され、働く意思のある知的障害者に働く場を創り出すことをライフワークにしようと決意し、社内の障害者雇用に携わることになったそうだ。今では、発達障害支援に関する学会で発表するまでに詳しくなっているスペシャリストだ。

障害者のイメージをどう変えていくか

業務運営部担当部長の岡本孝伸さん

「今まで『あうんの呼吸』で仕事をしていた会社の中で、発達障害という配慮が必要な人が入ってくるとなると、障害者と接したことのない多くの社員は、できれば避けて通りたいというのが本音だと思います。障害者という言葉はものすごく強烈なもので、それぞれが勝手な物語やイメージを作り出します。これから会社としてやるべきことは、障害者のイメージをどう変えていくかということです。みんなステレオタイプのイメージだけで、実は具体的なイメージを持っていませんから」(岡本氏)

見た感じでは一般人とまったく変わらないのが、知的発達の遅れがない「発達障害者」だ。特出した才能の持ち主も多いとされているが、実際、アスペルガー症候群を含む「自閉症スペクトラム障害」は、コミュニケーション能力や、社会的な関係を作る能力、応用力などに偏りがあるといわれてる。

プラスハーティ業務運営部主査の金山俊男さん(59)は、障害者雇用や育成に携わる中で、自分が知的な遅れがなく、対人関係の障害が比較的軽度な自閉症スペクトラム障害のカテゴリーに含まれる「アスペルガー症候群」、その他に「軽度のADHD(注意欠如多動性障害)」であることがわかり、60歳手前になって、これまで抱えていた違和感の理由がわかったという。

金山さんは、重度身体障害でもあり、歩行障害も含めいくつかの障害があるところに、「発達障害」が加わったのだ。

現在はプラスハーティで、自らの経験を踏まえ、雇用者が実力を発揮しやすく、また、周囲の理解が深まるようなマニュアル作成等を中心の業務として、日々職務に精励している。社会に出て40年近くなる金山さんは、他者とのコミュニケーションが難しいという状況の中、これまでどのような方法で仕事や人間関係に向き合ってきたのだろうか。

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