温泉の「男女混浴」は時代遅れになったのか 法律・条例で異なるちぐはぐな各地域の対応

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明確な公的見解はないが、旅館の場合は旅館業法に基づき、チェックイン時に宿泊者名簿の記載を求められるが、日帰り入浴施設にはそれがないということがある。どちらの施設も浴場の衛生・風紀の維持が求められるが、誰が入浴するか分からないことも対応の違いを生んでいるのかもしれない。

風紀の維持の面では、安易に日帰り入浴施設の貸切風呂の混浴を認めると無店舗型風俗店のサービスなどに使われるといった懸念も自治体担当者にはあるようだ。

旅館でも日帰りプランを設定したり、温泉利用だけを認めているところも多い。逆に日帰り入浴施設に隣接して宿泊棟がつくられるような場合もある。旅館と公衆浴場の区分けも現代人の消費スタイルを考えると意味が薄れてきていると言えよう。

家族で貸切風呂を利用できないことは妥当か

古くは、日本では温泉が溜まってできた野湯の利用から入浴が始まり、男湯・女湯という概念はなかった。人工的な湯船による銭湯が発達した江戸時代でも同様で、1791年に江戸の銭湯での混浴を禁止する男女混浴禁止令が出されたが、混浴は主流であり続けたという。

地方の温泉地などでは混浴が続いてきたが…(写真:YUMIK / PIXTA)

明治になって、西洋人の常識から野蛮とみなされ、今日のような混浴禁止の流れができたが、それでも地方の温泉地などで共同浴場の混浴が続いてきた。共同浴場の混浴は日本の温泉の風情のひとつともなっているが、最近の利用者のマナーの悪さ、カメラの小型化・IT技術の発展などによる盗撮などの増加により、その存続も怪しい。否応なしに廃止の運命だろう。

一方、貸切風呂の混浴禁止は意味があるのだろうか。公衆浴場法の「風紀に必要な措置」として男女の混浴の禁止が進んできた歴史がある。

風紀を乱す利用という問題があるため、未成年や未婚の男女同士の利用を制限する必要は確かにある。家族であれば、利用者を公衆浴場側が確認できるなどの手続きを設けることで男女でも利用を認めるのが妥当のように思う。

細川 幸一 日本女子大学名誉教授

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ほそかわ こういち / Koichi Hosokawa

専門は消費者政策、企業の社会的責任(CSR)。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。著書に『新版 大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『第2版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)等がある。2021年に消費者保護活動の功績により内閣総理大臣表彰。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線をたしなむ。

 

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