オバマ政権の第1期においては、大統領、副大統領に次ぐナンバースリーをヒラリー・クリントン国務長官が占めていた。なにしろ2008年選挙の際は、オバマとの間で史上最長の予備選挙を戦った相手である。オバマはその手ごわいライバルを、閣内最重要ポストに起用した。そして彼女は、その期待に応えて4年間、大車輪で活躍した。このことは、女性有権者をオバマ政権支持につなぎとめるうえで大きな効果があった。実際に2012年の大統領選挙では、女性票の動向がオバマ再選のカギとなっている。
自然発生的に出てきた、イエレン氏の声
ところが、2期目のオバマ政権は女性閣僚が少なくなっている。当初、国務長官に起用しようとしたのは、1期目に国連大使を務めていたスーザン・ライスであった。彼女は黒人女性であるが、ブッシュ政権のコンドリーザ・ライス国務長官との血縁関係はない。ただしこのライス女史、あだ名を「絶叫レディ」(Screaming Lady)ともいって、部下の評判が今ひとつだった。オバマ自身は強く推していたのだが、昨年9月11日のベンガジ領事館テロ攻撃事件の際における彼女の記者会見がどうのこうの、みたいな話が出てきて、結局、この人事は実現しなかった。
代わりに国務長官に指名されたのは、白人男性であるジョン・ケリー上院議員であった。余計な話だが、アメリカでは閣僚承認の権利は議会の上院のみにあり、上院議員が指名されたときにはシャンシャンで決まることが多い。なにしろ彼らは任期が長いうえに100人しかいないので、仲間内の結束が固いのである。
そうこうするうちに、「第2期オバマ政権は、マイノリティの比率が低いのではないか」という批判が飛び出すようになった。女性支持者が多い民主党においては、これは特に由々しき問題である。そこで自然発生的に、「史上初の女性FRB議長にジャネット・イエレン女史を」という声が高まった。彼女であれば、見識もキャリアもまったく問題ない。現職のバーナンキ議長も、夏休み恒例のジャクソンホール会議を欠席し、主役の座を副議長に譲る、という形でさりげなく彼女を側面支援していた。この時点で、次期議長はほぼ決まったか、という感もあった。
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