また金氏は昨年11月末、核とミサイルの開発が完成に近づいたと発言。北朝鮮のミサイル、特にICBMについては米国が直接の脅威にさらされることから、完成前に手を打たなければならないとか、完成までに要する期間はどれくらいであるとか、さまざまな言説が飛び交っている。いずれにしても、核とミサイルの開発が進んでいたことは、程度問題は別として、紛れもない事実だ。
結局、金氏としては、経済制裁に対する対応と、体制維持に必要と考える核・ミサイルの開発を両にらみで見ながら政策転換を行い、韓国との関係改善を突破口にして、米国と、さらには中国との首脳会談に進んでいったのだと思われる。
うがちすぎかもしれないが、金氏は韓国に「抱きつき」、さらに米国との首脳会談の日程を作り上げることによって、北朝鮮が”第2のイラク”になることを巧みに回避したのだ。さらに、朝鮮半島の非核化を俎上に載せることで、国際社会での孤立から脱却しようとしているのである。今回の中国訪問もその延長線上にあるとみられ、金氏の外交手腕は並々ならぬものだと言えよう。
利害が一致している中国と北朝鮮
一方、中国にとっても、北朝鮮との関係改善は望むところであった。理由は第1に、朝鮮半島状況の悪化で米国の軍事作戦の脅威が高まると、中国の受ける脅威も増大するからだ。たとえ中国が嫌がっても、配備されている高高度防衛ミサイル(THAAD)は、その第一歩だった。また北朝鮮で軍事衝突が起こると、中国の東北部が被害を受けるという事情もある。
第2に経済面では、制裁の強化によって、すでに北朝鮮と取引する中国企業にも悪影響が及んでいることが挙げられる。
第3に、中韓の関係改善には限界があることがはっきりしてきた一方で、中国と北朝鮮は党の関係、すなわち、中国共産党と朝鮮労働党との関係で深く結ばれており、その関係を壊してはいけないという考えが強くなったためである。
そして第4に、非核化に努めると金氏が明言しているのは、中国としても二重の意味で歓迎できることだ。そもそも中国は、朝鮮半島の非核化を支持しており、かつ金氏が目指しているのは、中国がかねてから主張してきた話し合いによる解決にほかならない。
5月に行われるとされる米朝首脳会談で、決定的に重要なのは、「北朝鮮の非核化」にどこまで焦点を絞れるか、またどこまで具体的に合意できるかである。これまでの歴史を振り返ると、「朝鮮半島の非核化」要求や、米朝双方が非核化に向けて進む際の「行動対行動の原則」、つまり、相手が一歩進めばこちらも一歩進むやり方などが、持ち出される傾向がある。首脳会談で扱う問題が複雑になればなるほど合意は困難となろう。
中朝首脳会談で見せた金氏の姿勢軟化が、米朝の話し合いにどんな影響を及ぼすのか。トランプ氏と金氏は、数々の困難をうまくさばき、「北朝鮮の非核化」について明確な合意に達することが求められる。
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