焦る金正恩、「電撃訪中」で見せた軟化の背景 「第2のイラク」になるのを恐れている

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これに対して習氏は、金氏を大歓迎した。テレビに映った習氏の満面の笑顔は、中国側が最大限の気配りをしていることを、雄弁に物語っていた。金氏の宿泊に充てられた釣魚台迎賓館には、別の棟に先客がいたが、それをすべて追い出して敷地全体をシャットアウトしたという。2日間にわたって習氏が金氏に同行したのも異例。金氏の訪中は非公式であったが、中国の歓待ぶりは、正式の国賓としても最高級であったともいわれている。

金氏一行の帰国後、北朝鮮の中央通信も、金氏の習氏に対する感謝電をはじめ、中国での行事と中国側の歓迎ぶりを細かく伝えた。おそらく満足していたのだろう。

ではなぜ金委員長は、この時期に中国を訪問したのか。もちろん、米国のトランプ大統領との会談、および時間的には、その前に韓国の文在寅大統領との会談が合意されたことがきっかけだったのは明らかだ。が、金氏の外交戦略として、一連の動きを見ていく必要がある。

制裁措置で著しく打撃を受けていた

実は、金氏は昨年11月末ごろから、それまでの強気一辺倒から”協調的姿勢”に転じていた。当初、金氏がその考えを示したのに対し、各国は必ずしも十分な注意を払わなかったが、明くる新年の辞で、金氏が平昌オリンピックへ北朝鮮も参加する意向を示したことによって、金氏の考えはいっそう明確となった。

その後、北朝鮮は韓国との協議を事務的に、つまり政治的な駆け引きをせずに進め、金氏は信頼する実妹の金与正氏を韓国に派遣。また韓国も、北朝鮮側の積極的な姿勢に応える形で、大統領府の鄭義溶国家安保室長を文氏の特使として平壌に派遣した。この結果、金氏と文氏が4月下旬、南北軍事境界線上にある板門店の韓国側施設「平和の家」で、南北首脳会談を行うことが合意された。

この南北関係の進展は、文氏がかねてから北朝鮮との関係改善に熱意を持っていたことが大きな背景になっているが、今年に入ってから南北間の協力が急に進み始めたのは、金氏が戦略的に動き出したからでもあった。

国連安保理事会は、核とミサイルの実験を繰り返し、国際社会を挑発し続けてきた北朝鮮に対して、かつてないほど強い内容の制裁決議をし、さらに米国はそれでも不十分だとして、独自で強力な制裁措置を取っている。

これに対して北朝鮮は、そのような圧力には屈しないと強気の姿勢を見せ続けているが、北朝鮮経済が著しく打撃を受けていることは、北朝鮮自身、誰よりもよくわかっているはずである。もちろん、政治的にどのような姿勢をとるかは別問題だが、無関係ではありえない。かつて、米国の取った金融制裁によってマカオにある北朝鮮系の銀行が取引困難に陥ったことがあり、北朝鮮当局も重大な問題であることを認めていた。制裁措置が金氏の政策転換の重要な背景になっていることは明らかだろう。

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