国も地方も人口減少社会を前提にした制度設計が必要
中原:私は自分の子どもたちの世代が少しでもマシな世の中を生きてほしいと思い、少子化対策をライフワークの1つにしています。2017年に世界的な建機メーカーであるコマツの坂根正弘相談役と少子化問題についてインタビューをしたとき(当コラムで2回にわたり掲載「日本が少子高齢化を止める唯一の方法とは?」「『田植え』はこれから不要になるかもしれない」)に、坂根さんは「コマツは少子化に対して頑張っている地方自治体を応援する。長野県や北九州市などは頑張っているよね」という話をされていました。まず、東京圏への一極集中と少子化の現状をどのように認識しているのかお伺いします。
阿部:長野県に限らず、日本全国では長い間、地方から東京へ若者が出ていく状況が続いてきました。そのため、過疎地域の問題や学校の統廃合など、地方ではすでにその影響が目に見えるようになり、少子化への危機感は相当高まっています。そうしたなか、「政府が地方創生に取り組むという旗を立てて、石破茂・元地方創生担当大臣のもとで地方の人口減少と少子化は憂慮すべき問題だ」と示していただいたのは、大変ありがたいことだと思っています。
以前はさまざまな計画が人口は右肩上がりで増えていくという前提で進められていたので、政府が示した問題提起のおかげで地方全体がそのような考えは間違っていると認識できた効果は大きかったと思います。
私たちは、少子化やそれに伴う人口減少が何十年にもわたって続くことは避けられないだろうと覚悟しています。日本人の出生数は統計データの残る1899年以降、2016年に初めて100万人を下回りましたが、2017年以降も出生数の減少傾向が止まらない見通しにあるからです。出生数の減少要因は出産適齢期の20代~30代の女性人口の減少が大きな要因ですから、今から数年で出生率が奇跡的に2.0や2.1に上がったとしても、30年~40年以上は人口が減り続けるという状況は変わらないのです。ですから私たちは、国も地方も含めて人口減少社会を前提にした制度設計をしていかなければいけないと考えています。
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