東レが初の大型買収。自前主義から転換へ 炭素繊維と水処理膜、2社で合計1000億円弱
世界首位の炭素繊維メーカーの東レが米ゾルテック社の買収で9月27日に合意した。買収額は5億8400万ドル(約580億円)。M&Aに頼らず、独自技術の開発で成長してきた東レにとって初の大型買収だ。
東レは、高機能・高品質のレギュラートウと呼ばれる炭素繊維が得意。一方のゾル社は、強度よりもコスト競争力が求められるラージトウで世界首位、レギュラートウを含めた炭素繊維で世界3位の大手だ。たとえば、レギュラートウはボーイング787など大型航空機の機体に用いられる。ラージトウは風力発電用風車の羽根が主な用途である。
今回の買収理由を、東レの日覺昭廣社長は「イノベーションのジレンマを避けるため」とスマートに語る。これまでの東レの高機能・高品質戦略のみを推し進めると、いずれ顧客ニーズとずれていき、一方で低品質・低価格の下位メーカーがキャッチアップしてきて、主な顧客を奪われかねない、という論理だ。
「レギュラートウほどの品質はいらないが、ラージトウより少しだけ高い品質が欲しいという顧客に対して、レギュラートウしか持っていなければ価格競争に巻き込まれる。しかしラージトウを持っていれば、『こういうのがありますよ』と提示できて、レギュラートウの価格下落を避けられる」と日覺社長は語る。
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