「ガザ地区」から初めて出た男性が見た現実 ほかの人たちの暮らしを見なければ…
エレツの検問所を過ぎてイスラエルに入り、その後、イスラエルと、占領されている西岸地区を通過して、アレンビー橋検問所からヨルダンに入国すると、広大な牧草地と背の高い木々が目に入ってきた。
エルサレムの旧市街地を通ったときには、岩のドームも見ることができた。アル=アクサー・モスクで止まって祈りを捧げることはできなかったが、バスの窓から手際よく写真を撮った。
保釈された囚人のような気分に
ガザ地区の自宅からヨルダンの首都までの距離は、直線で100マイル(160km)もないが、移動には12時間かかった。アンマンに着いたのは午後6時で、疲れ果てていたが、幸せだった。タクシーに乗り込んで窓を開けると、保釈された囚人のような気分に。汚染されていない空気を吸い、光に満ちあふれた、曇りのない、開かれた空間を見て興奮した。
家に帰ってからもこのときの気持ちを思い出せるように、初めて自由を味わう感覚について話しながら、アンマンの街を歩く自分の姿を動画撮影した。アメリカのビザを取得した私は1週間後、空路でニューヨークを目指した。
すべての経験が私にとっては新しいものだった。最初の数日は、深夜に起きて電気が止まる前に携帯電話の充電をした後に、ここはガザではないので電力計画に自分の生活が拘束されるわけではないことを思い出したものだった。
ニューヨークへのフライト中には、自分のトレーテーブルがどこにあるのか、トイレの場所はどこかをキャビンアテンダントに尋ねた。うっかり飛行機のドアを開けてしまうのを恐れたからだ。