たとえば、おもちゃに関していえば、まずは映画を見ていただいて、キャラクターを好きになってもらい、家でもそのキャラクターを置いておきたいとか、自分の人生にそのキャラクターが一緒に寄り添ってほしいと思ってくれたらいいなとは思います。しかしそれはあくまで、映画を作り、見てもらった後に来るものだと思っています。
ただ、この映画を作る時、ほとんどのキャラクターがガイコツなので、どうやってかわいいぬいぐるみを作るんだろう、マーチャントチームは大変だな、とは思っていました(笑)。
とはいっても、ビジネス的な観点からしても、映画作品の副次的な収入としてマーチャントを想定しているのは確かです。『カーズ』シリーズなどは、映画の収益をマーチャントの収益が上回っていますが、それは例外的な事例です。キャラクターが愛されている続編ものなどであれば、ある程度収益が見込めますが、シリーズものではない新しい映画作品のキャラクターになると、ストアやおもちゃ会社にとってもリスクを抱えることになる。そういう意味で今回は大変だったと思います。でも、こんなにもたくさんの種類のグッズを作ってもらって本当にうれしいです。
世界中の人々が共感できる手応えがあった
――かわいいガイコツのキャラクターを作るのには苦心されたのではないでしょうか。
とにかく魅力的なキャラクターにしたかった。ガイコツだからといって、怖いキャラクターにはしたくなかった。この映画の中では普通の人たちであり、普通の家族であるわけですから。その感触というのは、死んでいるからといって変えたくはなかったんです。だからかわいくするために、相当な時間をかけてデザインを議論しました。
デザインはいろいろな選択肢があったのですが、初期の頃から目玉はつけようと決めていました。それから歯をガッツリとは出さずに、唇っぽいものをつけるようにして、いろいろな表情をつけられるようにしています。特に(主人公の冒険の相棒である)ヘクターには感情移入をしてほしかったですから、そうした工夫をしています。
――スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーに取材をした際に、ピクサーの話をしていました。ピクサーで修業したアジアのクリエーターが、自国に帰ってスタジオを立ち上げているので、アジアのアニメのクオリティが高くなっているんだと。それはつまり、ピクサーの中にはさまざまな国の人々が働いていているということだと思うのですが、それがこのような多様性のある物語が生まれた理由としてあるのでしょうか。
世界各国から人材が来てピクサーで仕事をしているというのは確かです。われわれとしては、ダイバーシティ、多様性を推し進めていきたい。しかしそれが『リメンバー・ミー』という作品につながったわけではないです。この映画を作ったのは、僕がメキシコに興味を持ったこと。そして「死者の日」という祝日に興味を持ち、ポテンシャルを感じたということです。
メキシコという国を祝福する映画を作ると同時に、「世界中の人々にも共感できる作品を作ることができるのでは?」という可能性を感じたんです。ピクサーで作るすべての作品は、監督のビジョン、アイデアが定まったところから始まる。今回の場合は僕のアイデアから始まったというわけです。
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