「リメンバー・ミー」はピクサーの挑戦作だ アンクリッチ監督「リスク恐ず面白さを追求」

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――この映画は、メキシコはもちろんのこと中国、アルゼンチンなど世界中で大ヒットを記録しています。いわゆるディズニーの伝統ともいうべき、白人女性のプリンセスストーリーとは一線を画する本作がどうしてここまで世界的に受け入れられたのだと思いますか。

やはり誰にでも家族がいるからじゃないですかね。自分が死んだ後、家族にはどんなふうに覚えていてほしいのか、忘れないでいてほしいのか。みんな思ったことがあるでしょうし、どこに住んでいてもそれは共通して経験することじゃないですかね。

興行的に成績がいいのは、自分の人生や家族に思いを馳せることができるような作品になっていて、エモーショナル(情緒的)な作品だからだと思います。思ったよりも奥行き、深みがある作品だと感じていただいているようです。だからもう一度見たいと思ってもらえているかもしれない。ご存じのとおり、リピーターが出る作品というのは、興行成績にもいい影響を与えますからね。

Lee Unkrich(リー・アンクリッチ)/1967年生まれ。アメリカ・オハイオ州出身。『トイ・ストーリー』(1995年)のフィルム・エディターとしてピクサー・アニメーション・スタジオに参加。『トイ・ストーリー2』(1999年)、『モンスターズ・インク』(2001年)、『ファインディング・ニモ』(2003年)で共同監督を務め、『トイ・ストーリー3』(2010年)では監督・脚本を手掛ける。『モンスターズ・ユニバーシティ』(2013年)や『アーロと少年』(2015年)では製作総指揮を担当 (撮影:梅谷秀司)

――クリエーティブの面で、ピクサーのメンバーからは反対意見は出ることはなかったですか。

逆でしたよ。みんなワクワクしてくれました。もちろん最初はストーリーが見えているわけではないので、ただ舞台がメキシコで、死者の日の祝日が舞台になるというアイデアだけだったのですが、そこに可能性を感じて、みんながワクワクしてくれていたんです。

それがピクサーのすばらしさだと思うんです。ピクサーはリスクを恐れない。たとえ商業的には、安全パイとはいえない企画だとしても、クリエーティブの面で、面白いことを追うことができる環境がある。たとえ他のスタジオでは決してオーケーが出ないような企画であっても、ピクサーならリスクを負ってでも作らせてくれます。

いつか日本の物語も作れるかもしれない

――かわいいプリンセスが主人公ではなく、死者の世界が舞台で、主要な登場人物はほとんどがガイコツ。そして主人公は音楽を禁止されている。ここまで王道から外れた物語なのに、ピクサーならそういった制約をものともせず、ここまで感動的な物語を作ることができるという、ピクサーの自信を感じたのですが。

スクリーンの中に、「自分と同じような人物が描かれているんだ」という感覚が生まれることが重要だと思うんです。これからもピクサーからダイバーシティ、多様性のある作品が作られると思います。やはり異文化の物語を見るのは大切です。だってわれわれはみんなこの地球に住む人間なわけですから。違う言語を話し、違う文化を持っていたとしても、人間としての根っこの部分は共通した人間なんですよ。

――次は日本を舞台にしたピクサー映画を見たいですね。

そうですね(笑)。ただ、もうすでに宮崎駿さんがすばらしい作品をたくさん作っていますからね。そんな中で、日本を舞台にした物語を作るということはなかなか難しいことだと思いますけど、僕も日本は大好きですし、日本からインスパイアされた物語というのはいつか作られるかもしれないですね。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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