石巻のサバ缶が「希望の缶詰」になった必然 22万缶を蘇らせた経堂の人情ネットワーク
泥まみれのサバ缶を石巻から東京の経堂という街に運び、洗って売った、復興支援活動をご存知だろうか。メディアでもたくさん取り上げられたので、ご存知の方も多いだろう。でも、この活動が3月から年末までの長きに渡り、22万缶にのぼったことはあまり知られてない。エピソード自体が美しすぎて、そこに流された「膨大な汗」を私たちはつい見逃してしまう。
本書『蘇るサバ缶 震災と希望と人情商店街』を手に取ったとき、私はまず、この途方もない時間と缶詰の数に驚いた。本書を開くと、その活動の過程が連綿と綴られており、その地道な様子が伝わってくる。「何が人々を突き動かし、継続させたのか」その理由が、本書を読めばわかる。このレビューは、そこに焦点を当ててまとめていきたい。
経堂の人々の精神は、売名のためにやってきた勘違いした人々を見分ける。著者は、そういった人たちを「モンスターボランティア」として、本書の中で切り捨てている。それは、多様性を認めないということとは、ちょっと違う。後ほど詳しく述べるが、人々の街への愛着が活動への献身と継続性を生んだと私は考える。
思いはどのように共有され、組織化され、継続されたか
多くの企業はいま、CSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)を標榜し、自社の利益だけでなく社会貢献につながる経営を目指している。しかし、その実践は困難だ。経堂の活動の中心にどんな思いがあり、それがどうやって共有され、組織化され、継続されたのか。学ぶべき点は多い。本書は、草の根から生まれた、新しいタイプのビジネス書といえる。
JR東京駅の新幹線のお掃除スタッフの事例が、ハーバード大学経営大学院のMBA1年生の必修科目として採用されたのは記憶に新しい。今回の事例は、直接、企業経営に関するものではないが、地域や社会貢献といった今日的なテーマとリンクしている。ポイントは、真面目なものづくり、地域に愛される企業、そして新しいマネジメントだ。
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