コインチェック、「NEM」返金でも不透明な前途 馴れ合いの経営陣は抜本的刷新が不可欠に

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仮想通貨の法規制に詳しいフリージア法律事務所の藤井裕子弁護士は 「仮想通貨の場合は該当しないが、 これらの行為は普通の金融商品であれば金融商品販売法や金融商品取引法の禁止行為である断定的判断の提供(不確実な事項について断定的判断を提供し、または確実であると誤認させるおそれのあることを告げる行為)になりかねない」 と指摘する。

監査役の佐俣氏は本来、こうした状況を是正する役割を担うべきだが、そうなっていなかったというのが金融庁の指摘だ。

経営陣のガバナンス改善が期待できない以上、経営陣の入れ替えやふさわしい外部人材の登用がなければ、金融庁が求める「経営体制の抜本的な見直し」は実現できそうもない。

当面この先注目される動きは、3月22日までとされている金融庁への報告書提出だ。「ここからコインチェックをめぐる出資や買収の動きが出てくる可能性がある。一度目の行政処分の後は実際にそうした具体的な動きがあった」と語る取引所関係者もいる。

G20でどういった議論になるのか?

仮想通貨業界全体で見れば、3月19~20日にアルゼンチンで開かれるG20 財務大臣・中央銀行総裁会議(以下、G20)の内容も注目だ。ここでは、仮想通貨が議題として取り上げられる可能性が高い。

金融庁幹部は「(昨年4月に施行した改正資金決済法で)日本は仮想通貨のルール作りでリードしている」と胸を張っていたが、コインチェックの一件で一転世界から冷ややかな目で見られるようになった。

世界的に規制強化の気運が高まる中で、法律の専門家からは「仮想通貨が決済手段ではなく投機の対象になっている以上、金融商品の枠組みにはめて規制対象にしていく必要もある」との意見も出始めている。

日本を含め、G20の場で仮想通貨に対する監督・規制がどう進められていくのか。コインチェックが巻き起こした一連の騒動は、世界の仮想通貨業者の行方を左右する事態にまで発展している。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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