「子どもの頃は『変わっている』と言われることが多かったです。集団で遊ぶよりも1人で遊んだり行動したりすることが好きで、『天然』と言われることもありました。自分では変わっているという意識はなかったのですが、そう言われることは特に気にしてはいません」(湯川さん)
これらのエピソードからはASDだけでなくADHDの傾向が強いように思われるが、診断する医師によって見解が違う場合もある。もしかするとADHDとASDを併発している可能性もありそうだ。
高校生活は地獄 いじめを乗り越えて国立大学に進学
湯川さんがADHD、もしくはASDの症状が顕著に表れるようになったのは高校(進学校)のときだった。衝動性と不注意で勉強に集中できない。また、地方には予備校が少ないため、進学校では朝から晩までみっちりと学校側が受験の指導を行う。
筆者も地方の進学校だったため、高校の頃は朝7時半から夜19時頃まで学校で大学受験対策の課外授業。土日も模試で一日中学校に閉じ込められ、学校に行かない日は月に1回あるかないかくらいだった。湯川さんもそのような状態で受験勉強に励み、拘束時間が長いことが苦痛で仕方なかった。
またこの頃、クラスメートから「気持ち悪い」など言われて陰湿ないじめを受け、学校が地獄だった。しかし、母子家庭でもあり、母親を悲しませたくないと我慢して通った。「今思うと、定時制の高校に行って高校生活を楽しみたかった」と、湯川さん。
「自動車の開発や研究に携わりたかったので、大学は国立大学の工学部に進学しました。経済的余裕がなかったので、授業料免除の制度を利用し、半免を受けていたこともあります。母子家庭でも大学に通えたので、大学側には今でも感謝しています。しかし就職に関しては、自分の健康問題や震災が起こった影響もあり、行政の道に進むことにしました」(湯川さん)
現在は公務員として役所に勤務している湯川さん。業務の上でいちばん困るのが電話だ。何しろ、吃音症でなかなか言葉が出てこない。
「電話相手から『大丈夫ですか!?』と心配されたり、ひどいときは『何と言っているのかわからない。ほかの人に代わってください』と言われます。電話が終わった後は背中にびっしょり汗をかいていたり、息切れを起こしていることもあります。仕事にならないので、電話に関しては人事部に配慮してもらって、できるだけほかの人に出てもらうように職場内で協力してもらっていますが、協力してくれない人もいます。
プライベートで電話をかける必要がある際は、イタズラ電話と勘違いされることもあります。先日は、どうしても某ネットバンキングに連絡を取らなければならない用事があって憂鬱になっていたのですが、チャットサービスがあり大変助かりました」(湯川さん)
ADHDの傾向のある症状に関しては、基本的に落ち着きがない。仕事中、どうしても衝動的に動きたくなったら、慌ててトイレに駆け込んでいったん気持ちを落ち着かせてからデスクに戻るようにしている。
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