IQ130台の天才公務員が抱く生きづらさの闇 吃音症も発達障害の一つと位置づけられる

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「これは余談になりますが」と湯川さんは続ける。時折、発達障害当事者で芸術やIT、科学などで驚異的な能力を発揮する人がいる。スティーブ・ジョブズ氏やトーマス・エジソンなども発達障害であったと言われている。

実は湯川さんは、全人口のうち上位2%しかいない高IQ(知能指数)を持つ人の団体、JAPAN MENSAの会員だ。IQは知能検査の結果の表示法のうちの1つで、湯川さんのIQはなんと130台後半。一般的に東大生のIQの平均が120と言われているので、彼はかなりの高IQ、いわゆる天才ということになる。

湯川さんはJAPAN MENSAの会員だ(筆者撮影)

「Facebook上でJAPAN MENSAの会員と接していると、ここの方々は、(可能性も含め)発達障害のある率が、世間より多いように感じます。これは私見の域を出ませんが、会社などで無能と思われている人でも、別の仕事をさせたり、仕事場を変えたりすることにより、信じられないような能力を発揮する場合があるのではないかと考えています。米シリコンバレーでは、発達障害者を積極的に採用している世界的なIT企業が少なからずあることが、その可能性を裏付けるものとなっていますね。

そのため、日本企業の人事部局には、グレーゾーンの人も含め、発達障害で能力が発揮できていない方の積極的な配置転換を検討してほしいと思います。実際のところ、私の場合も教室でぎゅうぎゅう詰めになって挑んだ大学受験では、望みどおりの結果にはなりませんでしたが、自由に勉強できた公務員試験に関しては、全国模試で1ケタ順位を複数回とりましたし、本番も筆記に限ってはほぼ全勝でした。高校生活がもっと自由で気楽なものだったら、今見ている景色は違ったのかもしれません」(湯川さん)

自由にしゃべれないのがいちばんきつい

高IQの湯川さんでも今の日本の社会は生きづらい。吃音症にASD、もしくはADHDの症状が加わるとさらにつらい。

「自由にしゃべれないのがいちばんきついので、普通の生活をするのがしんどいです。今の事務仕事が向いていないので、仕事を辞めて自分のペースで生きていくか向いている職業に就きたいのですが、現実は厳しいですね。本音を言うと、たまに死にたくなることもあります」(湯川さん)

湯川さんは吃音症の生きづらさを軽減させられるよう、社会への啓発や当事者同士だからこそわかり合える、悩みを共有し合える場の提供を行っている団体に、積極的に協力したいと考えている。「仕事柄、行政の内部事情はある程度わかっていますので、行政の橋渡しという点では幾分お役に立てるのではないか」と、湯川さん。今年7月には広島で、吃音症の世界的なシンポジウムが開催されるので、それにも参加する予定だ。

この日、東北の自宅から深夜バスで首都圏まで来ていた湯川さん。てっきり新幹線を使っていると思っていたので驚いて「長時間のバス移動ってきつくないですか!?」と聞くと、ニコッと笑いながら「ケチなので」と紙にサラッと書いてくれた。

ASD×ADHDの傾向×吃音症という三重苦を抱える湯川さんの「普通の生活をするのがしんどい」という言葉が、いつまでも頭に残っている。これまでこの連載ではASDやADHD、そしてそれらが原因に起こる鬱や自律神経失調症などの二次障害を多く取り上げてきたが、吃音症も発達障害の一つであると、もっと認知されればと思う。

姫野 桂 フリーライター

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ひめの けい / Kei Himeno

1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをしつつヴィジュアル系バンドの追っかけに明け暮れる。現在は週刊誌やWebなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好きすぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。趣味はサウナ。

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