「ゆる鉄」たちが愛する缶詰スナックの正体 ガチもノンガチも集まる「キハ」の吸引力

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扉をあけると、そこはまるでビュッフェ車両の車内のようだった。カラオケの代わりに車掌のアナウンスや走行音が響く。奥には、立ち飲み形式のカウンターが。その上には何十種類もの缶詰が並んでいる。

周囲を見回すと、店内のいたるところに「駅の看板」「切符」「鉄道部品」など、鉄道ファン垂涎のお宝グッズが飾られている。戸惑っている私たちに、この店のマスターであり“助役”の二上さんが声をかけてくれた。

店内のいたるところに鉄道ファン垂涎のお宝グッズが(写真:筆者撮影)

名刺交換をしようとすると、二上さんはあるものを取り出した。「入鋏(にゅうきょう)」である。入鋏とは、乗車券や入場券などに入れるはさみのこと。何とも懐かしいアイテムだ。

こうして、私たちの列車旅がはじまった。

広告代理店からスナックのマスターに

「私が生まれたのは兵庫県で広告代理店に入社後、大阪から東京へと転勤し、ここ人形町で働くようになりました。忙しく働く人が多いこの街で、気軽に旅気分が味わえる。そんなお店を作ろうと思ったのが『キハ』のはじまりです。2006年12月に相方とともにお店を開店し、3年後からは一人で経営しています」

そう語る二上さん。さぞ、鉄道に詳しいのだろう。

広告マンからスナック経営に転じた二上さん(写真:筆者撮影)

「実は、鉄道のことはそれほど詳しくありません。鉄道に関するマニアックな話を期待されると、ちょっと困ってしまいます」。二上さんの趣味は、ゲームやアニメ、プラモデル、イラストなどとのこと。なるほど、メニューや店内の掲示物にはイラスト入りのものが多い。どれも自ら描いているそうだ。しかし、なぜ鉄道にこだわっているのだろうか。

「もともと、ちゃんとしたお酒をリーズナブルな価格で出したい、という想いが根底にありました。同時に、お酒をもっと楽しんでもらいたい、とも考えていたんです。何より、私自身が大の酒好きなものですから。それで、お酒を飲むシチュエーションを演出するために、“列車旅”を忠実に再現しました」

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