22歳男性が「ペーパー離婚」した親に思うこと 苗字が異なる家族は一体感がなく壊れるか

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でも、あらゆる人が、あらゆる面でマジョリティになるという状況は、どんな制度を作ったところで、実現し得ないのでは? だったら「みんながふつうの社会」を目指すよりも、「ふつうじゃなくても大丈夫な社会、マイノリティでも居心地が悪くない社会」を目指すほうが現実的だし、汎用性が高いのでは?と思うのです。

これは一見、将也さんの考えとは反対に見えるかもしれません。でもたぶん、目指すところはほとんど変わらない気がします。将也さんも「ふつうじゃない」のを居心地悪く感じる社会だから、「ふつうになりたい」と思うのでしょう。

自分が結婚するときは同姓でも別姓でもOK

将也さんのお母さんは、選択的夫婦別姓の実現を目指して、長年活動しています。そのため将也さんは、幼い頃からその様子を見て育ってきました。

ですが将也さん自身は、自分の苗字にあまりこだわりがありません。だからいつか結婚するときは「相手の苗字に変えてもいいし、松浦のままでもいいし、そのときに制度が整っていれば、別姓でもいい」と考えています。

「もし相手が『ダンナさんの苗字を名乗りたい』って思うならその考えを尊重しますし、変えたくないっていうなら、僕が変えるのにも抵抗はないですね。画数がすごく多いとか、カッコ悪い苗字だったらちょっと嫌なので、そのときは別姓が選べるといいですけれど(笑)」

自分の母親はなぜ、そこまで別姓であることにこだわったのか? 「百瀬」という苗字にどんな思い入れがあるのか? 「正直なところ、僕には想像しきれない」というものの、「でも『こだわるのはおかしい』って言うのはおかしいですよね」と将也さんは言います。

「僕は別に苗字にはこだわらないですけれど、人ってそれぞれこだわりがありますよね。そのこだわりは、封じ込めるよりも、どうやって認めていくかを考えていくほうが、大事じゃないですか。否定するんじゃなくて、どうすれば肯定できるか?という方向で考えるほうがいい。

『こうしたい』って言っている人がいて、その人がそうすることによって、他人に害を及ぼさないのであれば、ほかの人はそれを否定する権利はないですよね。

だからやっぱり、夫婦同姓でも別姓でも選べる制度ができてほしいと思います」

これは苗字に限らず、家族の形でも、なんにでもあてはまる話かもしれません。

あくまで誰にも迷惑がかからないかぎり、どんなことだって「自分がこうしたい」と思うやり方でできたほうがみんな幸せになりますし、人生のパフォーマンスも上がるでしょう。

社会全体がそうやって、いわゆる「多様な価値観」を認めるようになっていくと、ラクになる人や、力を発揮できる人が増えていくのでは?

昨今注目される夫婦同姓・別姓の選択制度は、そんないまの社会の流れの象徴のように思えます。

本連載では、いろいろな環境で育った子どもの立場の方のお話をお待ちしております。詳細は個別に取材させていただきますので、こちらのフォームよりご連絡ください。(例/犯罪被害者家族の方、加害者家族の方、自死遺族の方、等々)
大塚 玲子 ノンフィクションライター

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おおつか れいこ / Reiko Otsuka

主なテーマは「いろんな形の家族」と「PTA(学校と保護者)」。著書は当連載「おとなたちには、わからない。」を元にまとめた『ルポ 定形外家族』(SB新書)のほか、『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』(教育開発研究所)『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)『オトナ婚です、わたしたち』(太郎次郎社エディタス)『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(同)など。テレビ、ラジオ出演、講演多数。HP

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