将也さんの両親が結婚したのは、いまから約25年前ですから、旧姓を使いたい人にとっては、いまよりもっと不便が多かったでしょう。事実婚やペーパー離婚をする人もまだ少なく、家族のなかで苗字が異なるのは、いま以上に珍しいことでした。
でも将也さんにとってはずっと、その状態こそが「ふつう」だったのです。
「僕は『一緒に暮らしていることが家族だ』と思っていたから、苗字が別であることに関して、抵抗も、違和感もなかったです。
でも、それならそれで言ってほしかったな、とは思います。僕はペーパー離婚のことを知らず、両親が結婚していると思い込んでいて、親の苗字が違う理由をほかの子から聞かれても、『うちの親は結婚してるよ』って答えていたので。
小4のとき、女の子から『結婚するには苗字が一緒じゃないといけないんじゃない?』みたいに言われて、『えっ!?』ってなりました(苦笑)。それまで間違ったことを言ってしまっていたのが恥ずかしかった。親もいつか教えようとは思っていたんでしょうけれど『遅いよ』という感じです(笑)」
いつ子どもに伝えるか?
子どもにいつ「家庭の事情」を伝えるか? これは、いわゆる「定形外家族」(「ふつうの家族」以外)で必ず話題になる、共通テーマのひとつです。
離婚家庭や再婚家庭、里親家庭等々では、「ふつうの家族」と異なる点や、その理由について、子どもに説明する必要が出てくるのですが、そのタイミングが意外と難しいのです。
隠すつもりはないものの、「あまり幼いときに話しても、わからないかも」などと思っているうちに伝えそびれ、子どもが大きくなり、言う機会を逃してしまった……、というパターンをよく聞きますが、子どもたちはしばしばそれを不満に感じています。
そのため最近は「理解できないかもしれないけれど、小さいうちから繰り返し伝える」という人が、わたしの知る範囲では増えてきたように思います。将也さんの場合も、そんなふうだとよかったのかもしれません。
将也さんは、友だちに指摘されて初めて、両親が婚姻関係にない可能性に気づきました。そこでさっそく親に「離婚してないよね?」と尋ねたところ、返ってきたのは「離婚してるよ」との答え。
「それはショックでした。それこそ固定観念ですけれど、当時は離婚イコール、マイナスのイメージだったので。よく『行列のできる法律相談所』(テレビ番組)とかを見ていると離婚の話をやっていて、離婚というのは不幸なものだ、と思っていたんです」
わたしも離婚を経験していますが、そのイメージはよくわかります。離婚(ペーパーも含む)をする本人は、婚姻を継続するよりそのほうが良い人生を送れると思って離婚を選択している(ことが多い)のですが、一般的に離婚は不幸のイメージ一色です。特に法律相談の番組は、離婚のトラブルだけ取り上げるので、ネガティブな印象がより強まります。
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