ここで、読者の皆さんに考えていただきたいことがある。
「売り手市場・買い手市場」という議論は皆さんにとって果たしてどれだけ意味があるだろうか。
メディア的に、立場をシンプルに2つに分けてしまう方が扱いやすいし、売り手、買い手、という対極軸はわかりやすく、世間の注目も集まりがちだ。
しかし、実際に採用活動や就職活動に取り組んでいる当事者たちにとっては、実は「売り手市場・買い手市場という議論」には、『話のネタ』以上の意味がなくなっているのではないだろうか。
採用担当者であれば、全体のトレンドを知ることで、自社がどのように差別化していくか考えるきっかけになるうるだろう。
ただ現実は、「売り手市場なのか、買い手市場なのか」全体の傾向を知るだけでは、自社の採用活動を差別化することはできない。(むしろ、売り手市場なので、もっと露出しないとダメですよ、という求人広告の営業の餌食になる可能性のほうが高い。心当たりはないだろうか。)
業種・業界・規模で分析しても、そんなに意味があるデータにはならない。
せいぜい、「ウチの業界不人気だから、しょうがないよね」「ウチぐらいの規模にくる人はそんなにいないよね」と予想できた結果を再認識させられる程度の意味しかない。
不人気業界や規模が小さくとも、エクセレントな採用を行っている企業はいくらでもあるという事実に目を向けた方がいい。
買い手市場(≒就職氷河期)となったからといって、良い人材が自社に来るとは限らない。採用予算に厳しい制限が加わる中、良い人材が自社に集まるように、工夫しなければならないことに変わりはない。
今、採用担当者が行うべきは、実際に欲しいと思える人材はどこにいて、そのターゲットはどのような業界・職種を志望し、どのように就職活動を行い、いずれの企業に内定を得るのか、「個」にフォーカスをあてた調査・分析だろう。
「個」にフォーカスを当てた調査・分析を独自に行い、ターゲット人材に対しての「自社の魅力」を再度抽出し、求人媒体の選定や、説明会の打ち出し、選考プロセスの見直しを行って初めて差別化ができる。
学生の皆さんの中には、「売り手市場だから、難関企業の採用枠が広がって嬉しい」と感じる方も中にはいるかもしれない。しかし自分と同様の考えを持つライバルが増えていることも意識しなければいけない。採用枠が増えた分、競争も増え、結果として、難易度はほとんど変わっていないのだ。一企業のインターンシップに、1万人以上が応募する時代がくるなんて、だれが考えただろう。就職氷河期の時代には、一番人気のあるインターンシップでも、せいぜい応募者は2000名だった。
結局のところ、全体のトレンドに関しての議論は、調査対象となっている当事者達にとっては、ほとんど意味がない時代になってきている。企業も学生も、まずは「自社はどうなのか」「自分自身はどうすべきか」、全体のトレンドに踊らされず、「個」にフォーカスをあて、自社の採用戦略、自分の人生戦略を設計すべき時代なのだ。
慶應義塾大学在籍中にジョブウェブと出会い、インターンシップ生として働き始める。
大学卒業と同時に(株)日本エル・シー・エーに就職。経営コンサルタントとして、学校法人のコンサルティングに取り組んだことをきっかけに、2003年3月に(株)ジョブウェブに転職。
現在、新卒事業部の事業部長として、企業の採用活動のコンサルティングや学生を対象とした各種リサーチ、教育研修コンテンツの作成に取り組む。
1977年生まれ。富山県出身。
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