「プレミアム選考」で優遇される、特別な学生 少数限定の交流会、会社幹部と話す機会…

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インターンシップを開催し、たとえば「業務効率を上げる方法」、「新商品の開発提案」といったワークショップを行う。同時に評価を行い、基準に達している学生がいれば、採用候補者として、水面下で選考を行う――。

文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所の平野恵子主任研究員は、「去年に比べるとそうした水面下で行う選考が増えている印象が強い」と感じている。文字通り、表面に出てこない採用活動なので、実態を読み取るのは難しいが、多くの企業で行われている可能性が高い。3月以降にも「正式な選考」を行うものの、内定者を確実に確保するため、より志望度が高く優秀な人材に関しては、早めにアプローチをして囲い込みを図ろうと躍起になっている。

2月24日に都内で開催された、キャリタスの就活イベント。すでに就活は進んでいる状況だ (写真:風間仁一郎)

一方、学生側も実態を心得ており、少しでも内定の確率を高めようと、1日間だけの「ワンデーインターンシップ」への参加が人気だ。特に12月から2月ごろに行われる「冬のインターンシップ」は短期間の開催日程のものが多く、期末試験の合間をぬって参加する学生も多い。

「これまでにワンデーを中心に十数社のインターンシップに参加した。そのうちいくつかの会社から、採用について、かなり前向きな話をいただいたことがある」と語るのは、都内のある難関私立大学の3年生。実際に選考に進んだ会社もあったというが、「その企業に早々に内定を決めてしまっていいのかと考え、選考途中で辞退した」と語る。

企業側も言葉巧みに、就活生を囲い込もうとする動きが見られる。気になった学生に対して、「少数の学生だけを限定した社員交流会」、「特別に会社の幹部と話せる機会がある」という案内を個別に送っているという。その際、名称に、「プレミアム(面談会、質問会…)」という言葉を入れるケースが増えているのも特徴のようだ。”特別感”を出して、学生の心をくすぐっている。

ルールを守るほうが損する仕組み?

「今の若者は損をすることを避けたがる傾向がある。企業から特別に選ばれた感や、行っておかないと損する気持ちが高まる名称は、就活生に響く言葉だと思う」と、採用コンサルタントの谷出正直氏は分析する。とりわけ大企業がこうした言葉を使うと、かなり学生の心に響くようだ。

もちろん、インターンシップからの採用については、キャリア教育を目的とした就業体験から「逸脱」していると、懸念の声が出ている。

昨年11月に全国123の私立大学が加盟する日本私立大学連盟が「ワンデーインターンシップの弊害是正に向けて」という提言を発表。その呼称を廃止すべきだと主張するのと同時に、「ワンデーインターンシップを学生のエントリー促進や囲い込みの手段とするなど、企業側が実質的に採用選考過程としているケースが多く見られる」と、警鐘を鳴らす。

また経団連加盟企業の採用担当者からも「ルールを守っているほうが損をする仕組みはどうなのか」と不満の声が漏れる。

文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省は共同で、「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」という文書を出している。取得した学生情報の取り扱いについては、「2月までは、広報活動・採用選考活動に使用できない」と明記している。法的拘束力があるものではないとはいえ、国がガイドラインを明示していることも留意するべきだろう。

実態に合わせて「インターンシップからの採用を容認すべき」との声は強い。が、「インターンシップからの採用」は結局、就活の早期化につながるだけだ。売り手市場の中、人材をいち早く囲い込みたい気持ちは、わからなくもない。ただ、採用担当者や就活に携わる業界関係者の人々は、これまでの早期化の歴史や学生の負担を考えて、もう一度、インターンシップの本来の意義について考えるべきかもしれない。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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