13歳と15歳の日本人が見たフィリピンの現実 僕と私は取材で子どもたちの困難を知った

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仲良く遊んでいたのだけれど…〈写真:©️国境なき子どもたち(KnK)〉

山邊:あたりを見渡すと、今にも泣きそうな顔をしたティナがこちらをにらんでいます。そして目が合ったかと思うと急にそっぽを向いて柵に腰かけてしまいました。慌ててそばに行っても一切目を合わせてくれません。「大丈夫?」そう問いかけても、何も答えてはくれません。この前日も同じようなことがあったので、私はとにかくティナの隣にいることを選びました。葉っぱをハートの形にちぎってティナに渡しました。彼女はそれを黙って受け取りました。

スラム街に暮らす友達が教えてくれた「本当の豊かさ」

山邊:1時間ほど経ってもそのままだった彼女のことが気になり、私は安田菜津紀さんにティナの様子を伝えました。すると菜津紀さんはこう答えたのです。「彼女はゴミ山のあるスラム街パヤタスの子でしょ。そこの子はパヤタスから出たことがないことも多いんだ。だから、楽しい時間が続くということに対して『怖い』という感情を持ってしまっているのかもね。それと、これまでたくさんのNGO、NPOの人たちと出会って別れてを繰り返してきたから、この友情もいつかは終わっちゃうんだと思って悲しくなっているのかもね」。私はこれを聞いて、本当に悲しい気持ちになりました。「こんなにすてきなティナは、この時間を純粋に楽しむ時間すら持っていないの?」、そう思うと涙が止まりませんでした。

帰り際にティナがくれたネックレス(写真:GARDEN編集部)

しばらくして彼女が私のところへやってきました。そして、「鈴お姉ちゃんと友達になれてうれしかった。さっきはごめんね。また泳ごう」と言って、私が渡したのと色違いのハートの葉っぱをくれました。そして帰り際には、「彼女の宝物だ」と言っていたネックレスをくれました。私はこれをティナとの友情の証しとして、一生大切にしていこうと思っています。

翌日私は、パヤタスの街に向かいました。そこにはティナのお家があるのです。パヤタスの街について窓を開けた瞬間、思わず鼻を覆いたくなるほどの生ゴミが腐ったにおいが漂ってきました。「ゴミ山まではまだ距離があるはずなのに」と私が戸惑っていると、窓の外に薄汚れた水で洗濯をしている子どもを見つけました。ここに住む人たちにとっては洋服や家からこのにおいがするのは当たり前のことなのです。

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