13歳と15歳の日本人が見たフィリピンの現実 僕と私は取材で子どもたちの困難を知った
栁田:僕が「鑑別所」に入って初めに感じたのは、そのひどいにおいでした。汗を大量に吸い込んだタオルや服が干してあり、衛生的にもあまり管理されていないことがわかりました。みんな初めは僕たちのことを「誰だ、この人は?」みたいな鋭い目付きで見ていました。でも僕は緊張しきって逆に笑顔であいさつをしました。するとみんなの強張った顔はすぐに消え、僕はとても安心しました。その後みんなが積極的に話しかけてくれて、「この子たちが本当に悪いことをして入ってきた」とは思えないほど元気でした。そして実際には悪いことをしなくとも「鑑別所」に入れられている実態を、取材インタビューを通して知ることになりました。
山邊:インタビューする相手の女の子が私の目の前に来た時、私は少し動揺してしまいました。13歳だというその女の子の目は、子どもの目ではなかったからです。「何か暗いものを背負っている」、そんな感じがしました。
「鑑別所」の状況などについていくつか質問した後、「なぜ収容されてしまったの?」と尋ねました。すると、彼女の顔にあった張り詰めたものが一気に弾けて、彼女は顔を曲げて大粒の涙を流して泣き始めました。そして首を横に振りました。慌てて質問を変えましたが、その涙は止まることがありませんでした。「彼女の過去には思い出すだけで心がはちきれそうになるほどつらい何かがあったんだ。そして私のこの言葉が彼女の心の傷をえぐってしまったんだ」、そう思うと何も考えられませんでした。
地域社会から隔離するため保護された少女
山邊:後から聞いた話によると、この小さな女の子は性犯罪の被害に巻き込まれ、地域社会から隔離するため保護されたそうです。しかし、彼女は被害者であるにもかかわらず、保護されたのは犯罪者が収容されるはずの「鑑別所」だったのです。「魂の殺人」と言われている性犯罪の被害に遭って、こんなに窮屈な「鑑別所」に押し込められていたなんて、きっと本当に怖かっただろうなと思います。しかも鑑別所の職員は彼女が収容されている理由を完全には把握しておらず、私のインタビューをきっかけに、6人の無実の子どもたちが適切な施設に送られることになりました。
しかしこの話は、「めでたしめでたし」では終わりません。彼女たちがこの鑑別所で受けた心の傷は、一生残り続けることになるからです。70人の子どもたちに対し、ソーシャルワーカーはたったの1人。人手不足の問題も子どもたちを追い込んでいます。これ以上、手違いでつらい環境に置かれる子どもたちが出ないように、子どもたちが子どもらしい時間を過ごすことができるように、私たちはもっと貧しい子どもたちに寄り添わなければならないなと強く感じました。