13歳と15歳の日本人が見たフィリピンの現実 僕と私は取材で子どもたちの困難を知った

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山邊:次に私は、ジョパイと(ジョパイと出会った時に同じ路上にいた)アダムの2人に物乞いの様子を見せてもらいました。40人の大人に手を出して、恵んでくれたのはたった2人。大人の中には「シッシッ」と犬を追い払うような仕草をして、まるでこの2人を野良犬のように扱い、目すら合わせず歩き去っていく人もいました。しかし2人は慣れているといった様子で、少しも悲しそうな表情はしませんでした。私はその姿を見てとても悲しくなると同時に、これは「世界の無関心」という問題にも似ているなと感じました。子どもたちに無関心でいること、目を背けていること、これはこの大人たちと同じことをしているのではないかと私は思いました。

ストリートチルドレンの負の連鎖はずっと続いていきます(写真:GARDEN編集部)

その後、アダムのお家にもお邪魔しました。家までの階段は歩くたびにギシギシとしなり、ビクビクしながら上りました。するとそこには見たこともない風景が広がっていました。家の面積はわずか1畳ほど。しかもその床すべてが汚れた洋服で覆われています。真昼のはずなのに、部屋の中は真っ暗。天井は座った状態でも触れそうなほど低く、とても立てるような状態ではありません。トイレやお風呂なんて、もちろんありません。

するとアダムはどこからかスマートフォンを取り出し、コンプリートしたというゲームの画面を見せてくれました。そこで私は思わず、「そのスマホどこで買ったの?」と言いました。すると彼は、「あ、これは友達のお母さんがくれたんだ」と答えました。「通信費はどうしているんだろう」などさまざまな疑問はありましたが、怖くなって聞くのをやめておきました。

私がアダムに「宝物はなに?」と聞くと、「教育だよ」と彼は答えました。今のアダムは勉強に専念できる状態ではありません。路上には友達もいて、自由もあって、幸せにできる薬(シンナー)もあって、物乞いをすればおカネだってあります。家なんかよりずっと広いです。あの窮屈な家で勉強するか、それとも路上に出るか、皆さんならどのような選択をしますか? 今アダムはこのような選択を迫られているのです。「それに比べて私は、今勉強に集中できる環境にある。それならば必死に勉強してこの子たちが勉強できる環境をつくれるようになりたい」、そう決心しました。

「宝物はなに?」と聞くと、「教育だよ」と彼は答えました〈写真:©️国境なき子どもたち(KnK)〉

罪もなく収容された子どもたち

栁田:僕たちは「青少年鑑別所」も訪れました。「青少年鑑別所」とは、さまざまな法を犯した15歳から18歳までの子どもたちが更生プログラムを行う場所です。しかし、法律には鑑別所とは書いておらず、「希望の家」というもっと環境の良い場所だと書かれています。しかし実際には「希望の家」を作る予算はなく、「鑑別所」というひどい環境に子どもたちが収容されてしまっています。さらに、年齢が15歳以下の子や、法を犯していない子も一緒に収容されてしまっている、何が何だかわからない状況になっています。

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