13歳と15歳の日本人が見たフィリピンの現実 僕と私は取材で子どもたちの困難を知った

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山邊:においによる健康被害や嗅覚のマヒなども深刻だと聞きました。パヤタスに住む人の多くは、ゴミ山からアルミなどの使えるものを拾って生計を立てています。彼らにとってここは「宝の山」なのです。しかしこの「宝の山」で働くことは、危険と隣り合わせでもあります。

ゴミ山という収入源がなくては暮らしていけない現実

山邊:2000年7月10日、高さ約30メートル、幅約100メートルに渡ってこのゴミの山は崩れ落ち、周辺に住む多くの人の命を奪いました。234人の方が亡くなったと発表されていますが、実際には800名以上の方が犠牲になったと言われています。普段のゴミ拾いでも危険は多く、国境なき子どもたち(KnK)で支援を受けている子の兄弟も、ここでトラクターに巻き込まれて亡くなったそうです。そんなパヤタスのゴミ山が今年中に封鎖されることが決まり、大きな反対運動が起こっています。どんな危険があろうとこのゴミ山の収入源がなくては暮らしていけない、そんな現実がありました。

ここに住む人たちにとっては洋服や家からこのにおいがするのは当たり前のこと〈写真:©️国境なき子どもたち(KnK)〉

山邊:そしていざ、ティナの家に行きました。迎えにきてくれたティナと、日差しが照りつける中、日傘を刺しながら手をつないで歩きます。しかし、到着した家の中は窓がないので薄暗く、まるで夜のようでした。裸足で中に入るとひやっとした感覚があり、見ると床が汚水で汚れていました。台所にはゴキブリが5匹ほど列を成しており、全体的にあまり清潔ではないという印象を受けました。「食べ物に困ることも多い」とティナは言っており、「あんなにおしゃれなティナがこんな暮らしをしているだなんて」と、とても驚きました。

いつもは兄弟3人で寝ているというスペース〈写真:©️国境なき子どもたち(KnK)〉

家族の人数を聞くと、なんと12人家族だそうです。しかしティナの家はそんな人数がとても住める広さではないように見えます。そこで、「いつもどうやって寝ているの?」と尋ねると、「お母さんとお父さんがベッドで寝て、私たちは床で寝ているの」と答えてくれました。そこで実際に寝てみる事にしました。私たちが寝そべっているこのスペースに、いつもは兄弟3人で寝ているそうです。

「楽しそうだけど窮屈すぎて私にはちょっと耐えられないかな」と思った時、「Mother」「Father」「Family」などティナの妹たちによる落書きが壁一面にあるのを見つけました。私は彼女の笑顔がすてきな理由が少しだけわかったような気がしました。

大人数で課題もあるけれど、あったかい家族。それこそが明るい彼女をつくっているのかもしれません。

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