精肉店「柿安」がフードコートに進出する事情 「丼」を主軸とした新業態は受け入れられるか
1871年(明治4年)、現在の三重県桑名市で牛鍋店として創業した同社は、その後、料亭をはじめとするレストランと精肉販売が主力事業に成長した。そして、1972年に「牛肉しぐれ煮」の販売を開始。これらの精肉や贈答用佃煮の販路として、高級品を扱う百貨店を深耕していった。
2001年にはBSE(牛海綿状脳症)問題の余波を受け、精肉販売が急落。2002年9月期(当時は9月期決算)は創業後初の赤字に転落した。これを機に、家庭で食べるおかずやサラダなども扱う総菜店を軸にして百貨店への食い込みをさらに強めた。
百貨店の先行きに不安
ところが、昨今は百貨店が構造的な不況にあえいでいる。特に、地方では閉店する百貨店が続出。柿安本店が得意とする東海圏でも、名古屋市で「4M」と呼ばれた百貨店名門の一角、丸栄が今年6月に幕を閉じる。
今後の百貨店経営は、これまでのように順風満帆であるとは考えにくい。「勝ち組と負け組が明確になる可能性がある」と、堀執行役員は見通す。
不安定な百貨店に代わる新しい販路として、柿安本店が照準を定めたのがSC内のフードコートだった。ただ、家族層などから根強い支持を得ているフードコートは出店競争が厳しい。テナントの入れ替わりがほぼ皆無で、店舗の空きは簡単に見つからない。
激しい陣取り合戦の中で、同社は老舗店の”したたかさ”を発揮する。柿安本店は2005年から和菓子販売店「口福堂」を大型SC内中心に展開しているが、この和菓子販売店(現状200店弱)は大手総合スーパー(GMS)のイオンへの出店比率が高い。
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