意外と知らない「ライトノベル」ブームの現在 いったい誰が、何を読んでいるのか

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すでにライトノベルが誕生してから40年以上は経過しており、読者にも世代間格差が生じている。世代ごとの好みや消費者ニーズが異なるのも当然だ。

電子書籍配信サイトの人気ランキングを見てみると、Book Walker、Reader Store、BookLiveのいずれでも、現代ものや、ラブコメディを抜いて上位を新文芸のファンタジー作品が占めている。

業界に押し寄せる新文芸の波

高まる新文芸の人気に反応して各社の新文芸への進出ラッシュも起きている。昨年だけでも、Kラノベブックス(講談社)、プライムノベルス(主婦の友社)、ツギクルブックス(SBクリエイティブ)、ガガガブックス(小学館)、Dノベル(集英社)などの新文芸レーベルの創刊が相次いだ。

小説投稿サイトの作品を書籍化することは、出版社側にとってもメリットが多い。1つ目はネット上での読者人気を見てから出版計画を立てられる点。2つ目は出版までの時間的ロスを極力省くことができる点だ。

従来の作家デビューの過程だと、新人賞に作品を応募し、選考と受賞を経て出版するまでに1年以上かかっていた。また現役作家でも編集部に企画を通してから執筆というケースでは、どんなに早くとも3カ月から半年はかかってしまう。

日々、変化する読者のニーズに対応してヒット作品を生み出すにはタイミングとスピードが重要だ。そうした出版社側の求める要件にWeb小説は合致していた。

ただし、問題点もある。もともとネット上で無料配信されているWeb小説からどうやって収益を得て、作者に還元するかが今後の課題だ。

そのため各社はWeb小説を原作としたコミック化に力を入れはじめている。

双葉社は自社レーベルのモンスター文庫のコミカライズを専門にするモンスターコミックスを2017年9月に創刊。フロンティアワークスも自社レーベルのアリアンローズのコミカライズを手がけるアリアンローズコミックスを2017年11月に創刊した。直近の2018年2月にはKADOKAWAがフロースコミックを創刊と、各社の力の入れようがわかる。

いまや連載誌についてもネット上の漫画配信サイトが主流だ。スマホアプリなどから読める漫画配信サイトや、出版社によっては、オーバーラップの「コミックガルド」、ホビージャパンの「コミックファイア」、アース・スターの「コミック アース・スター」など、自社の漫画配信サイトを持つまでになっている。新文芸、コミックスジャンルともに多数刊行をしているKADOKAWAは、異世界No.1フェアと銘打って実店舗での新文芸作品の店頭露出拡大と認知拡大を強めている。ネット上でも、実店舗でも各社の販売競争が激化しそうだ。

新文芸の出版ラッシュの波が、コミックの出版ラッシュという第2の波を生んでいる。このコミカライズへの競争で主導権を握れるかが、原作の売り上げ、ひいてはライトノベル業界の情勢にも影響してきそうだ。

 最後に筆者としては、アニメが現在放送中の新文芸『オーバーロードⅡ』と『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』、そして新文芸ではないが、昨今、盛り上がりをみせている将棋ブームの追い風を受けている『りゅうおうのおしごと!』(白鳥士郎/SBクリエイティブ)のクライマックスへ向けてのラストスパートに期待している。

愛咲 優詩 フリーライター

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あいさき ゆうじ / Yuji Aisaki

ライトノベル歴20年以上。これまでに読んだライトノベルは約6000冊。好きなジャンルは異世界ファンタジー。最近は寝る暇もおしんでWeb小説を読みあさり、埋もれた傑作の発掘を生きがいとする。

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