意外と知らない「ライトノベル」ブームの現在 いったい誰が、何を読んでいるのか

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そして2010年ごろから話題になり始めたのが、ネット上の小説投稿サイト(主なサイトに「小説家になろう」、「エブリスタ」、「カクヨム」ほか)などで連載されていたWeb小説の書籍化の波だ。アルファポリスのレジーナブックスや、主婦の友社のヒーロー文庫など、Web小説の書籍化を中核にした新興レーベルが台頭し、またたく間に市場を席巻したのが第3次ファンタジーブームだ。最近は、こうしたWeb小説発作品を「新文芸」、あるいは「ライト文芸」「キャラ文芸」などと呼んでいる。

2016年度のライトノベル市場規模は、文庫本と単行本では前年比3.4%減の約339億4000万円だが、電子書籍では前年比22.4%増の約97億円と好調だ。

電子書籍への移行で文庫本と単行本は2011年をピークに減少傾向にあるが、全体としては2011~2016年で28.9%増と右肩上がりに拡大している。(「ORICONエンタメ・マーケット白書2016」より)

昨年、1年間に出版されたライトノベル全体の作品数は約2500点に及ぶ。2007年は年間約1250点であり、10年で約2倍に増加したことになる。

メディアミックスが支える市場の拡大

そのライトノベル市場の拡大を支えるのは、出版社のメディアミックス戦略にある。小説を原作としたコミック、アニメ、音楽CD、ゲーム、キャラクターグッズなど、1作品だけで数多くの関連商品を作ることができ、多くの企業やメーカーを巻き込めるのが強みだ。

こうしたメディアミックスの反響、特にアニメ化による原作小説の宣伝効果が大きい。近年、アニメ化された『オーバーロード』(新文芸単行本)、『この素晴らしい世界に祝福を』(角川スニーカー文庫)、『Re:ゼロから始まる異世界生活』(MF文庫J)、『幼女戦記』(新文芸単行本)は、いずれもアニメ放送以降で書籍の売り上げが平均300%以上伸長しているという。

そのためライトノベル原作アニメも増加傾向にあり、毎年20~25作品がアニメ化されている。これはゲーム原作、コミック原作のアニメの本数に匹敵する勢いだ。

また作品の幅を広げることで客層の囲い込みにも成功している。

これまではファンタジー作品といえば『アルスラーン戦記』(田中芳樹/光文社)のような異世界を冒険する「アナログ型」が王道であったが、現在では『ソードアート・オンライン』(川原礫/電撃文庫)、『<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-』(海道左近/ホビージャパン)のようなゲーム世界に登場人物が入り込んだ「デジタル型」がファンタジーの主流だ。

物心がついた頃から携帯電話やインターネットに触れていた若いデジタル世代にとっては、ロールプレイングゲームの中こそが身近なファンタジーなのだ。

一方、『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』(柳内たくみ/アルファポリス)など人気作品の中にはバイオレンスな描写が多く、政治や戦争を主題にしたストーリーも。10代の読者よりも、20~30代の読者に支持されていると見られる作品は少なくない。

このことは学生から社会人へと成長してもライトノベルが読まれていることを示している。もはやライトノベルは10代の若者だけのものではないのだ。

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