「進撃の巨人」ヒットが映す20代の悲痛と希望 理不尽な戦い、それでもあがく姿に共感する
講談社『別冊少年マガジン』(月刊)で連載中の人気漫画『進撃の巨人』が快進撃を続けている。2009年10月の同誌創刊号から諫山創氏の作画によってスタートした作品で、発行元の講談社によれば、単行本の発行部数はこれまで発売された22巻で累計6600万部を突破。異例のスピードで日本の超人気漫画作品の1つに数えられるようになった。
メディアミックスの勢いもすさまじい。アニメ化、スピンオフ化、ゲーム化、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のアトラクション化などなど、ブームは広がり続けている。いったいなぜ、これほどまでに支持されているのだろうか?
「先行き不透明な時代の若者」
背景を読み解くと、意外にも「報われない20代」の心理が見えてくる。
進撃の巨人は、従来の大ヒットした少年漫画とは少々テイストが異なる。ネタバレになるため詳細をなるべく控えるが、それは作品中で描かれる「主人公側の勝利」の扱いだ。歴代発行部数が3億部を超え、人気漫画単行本の累計発行部数トップに輝く『ワンピース』(『週刊少年ジャンプ』で連載、集英社)を引き合いに出すまでもなく、少年漫画のエピソードは大多数が、主人公側の勝利で終わるようになっている。
一方、進撃の巨人は異常なほど主人公側の勝利が少ない。主人公が一般人とは異なる超常の力を身に付けてもなお、敗北、引き分けに近い辛勝、犠牲者が多すぎてまったく喜べない勝利――などが続く。
従来の少年漫画に慣れた層が読めば「こんなにストレスがたまる漫画のどこが面白いんだ?」と思ってしまう可能性すらあるが、これこそが『進撃の巨人』の主要読者層が感じている「現実」であり、「感情移入できる物語」でもある。
主要読者層のうち、最もボリュームが大きいのは20代半ば~後半といわれている。さらに続くのが30代、10代。彼ら、彼女らが生きてきた時代は、バブル崩壊後の「失われた20年」だ。つねに不景気が続き、先行き不透明な時代。それが進撃の巨人の世界観に似ている。
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