踊れば鳴る「リストバンド型楽器」の潜在力 世界17カ国で40万台出荷のヒット商品

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「何のアイデアもなかったのですが、頭がちぎれるぐらい考えて思いついたのが、『今までと逆の発想』でした」(楠氏)

つまり、音楽に合わせて踊るというのは普通の発想。それをひっくり返し、踊ることで音楽をつくれるガジェットがあれば、売れるのではないかと考えた。

音は、スマホと接続したスピーカーからも出力できる(筆者撮影)

「あとは会う人会う人に、アイデアを話しまくっていきました」(楠氏)

そうしたなかで、エンジニアであり現在、同社で最高執行責任者を務める佐合秀昭氏との縁ができ、アイデアの具体化や技術的なブラッシュアップが可能となったという。

開発の過程で重視したのが、小型化、省電力化、そして、遅延(機器を動かしてから、音が出るまでのタイムラグ)を極限までなくすことだった。スピーカーを通すことなどでどうしても生じてしまう遅延をコントロールするのは難しい技術だそうだが、最終的には、ドラムを鳴らす感覚ぐらいまで縮めることができたという。詳細は企業秘密だが、プログラム上の工夫により実現したそうだ。これにより、違和感なくダンスに合わせて音を楽しむことができるようになった。

海外市場を狙った理由

このように、着想からわずか1年で完成、海外ですでに40万台を販売している。しかしなぜ、先に海外市場を狙ったのだろうか? 「もともと主戦場は欧米。売れたら日本に持ってこようと思っていた」という楠氏だが、偶然の要素も多分に大きかったようだ。

商品が完成すると、楠氏は「踊りながらいろいろな人に見せまくった」そうだが、真っ先に食いついてきたのが英国のエンジニア、ニコ・ニコリッチ氏だった。

「『グレイトプロダクト! これは売れます。2カ月後にある商談会に行きましょう』と言われて、急ピッチで準備を進めました。これが2017年の1月です。またも踊りながら商談をし、1週間で20万個以上のオーダーを受けました」(楠氏)

楠氏自身が体を使って商品の魅力を伝えられたのが、商談において功を奏した。以降、おもちゃの展示会に出展するほか、テレビCMやSNSでの発信、イベント開催など、宣伝にも力を入れた結果、米国トイザらスの「2017 HOLIDAY HOT TOY LIST!」に選出されるなど大きな話題となった。

次ページついに日本での発売が実現
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事