「音楽聴き放題」の大混戦に待ち受ける現実 アップル、LINE、AWAの優劣は速攻で決する
「アップルは本気だ。簡単には撤退しないだろう」
7月に始まった月額定額制で「聴き放題」の音楽ストリーミング(逐次再生)サービス「アップルミュージック」を使った競合サービスの担当者は、アップルの「覚悟」を感じとった。
ライバルに先駆けて、国内では2つのサービスが始動した。エイベックス・グループとサイバーエージェントが出資する「AWA(アワ)」(5月開始)。LINE、ソニー・ミュージックエンタテインメント、エイベックスなどが出資する「LINEミュージック」(6月開始)だ。日本でも、過去にいくつかのサービスが立ち上がったが、特定の曲を選んで再生する「オンデマンド型」サービスが本格化するのは初めて。2015年、音楽業界は「ストリーミング元年」を迎えた。
「音楽はもう終わった」「CDが売れる時代は来ない」「若い世代を中心に、音楽は無料で聴くものになってしまった」――。
音楽ソフトや有料配信市場は大幅減
業界からはマーケットの惨状を嘆く声が聞こえてくる。CDやDVDなど音楽ソフトの売上高は1998年の6074億円から、2014年は2541億円と4割程度にまで落ち込んでいる。有料配信も「着うた」「着うたフル」などモバイル向けの減少もあり、2009年の909億円から2014年は437億円に半減した。
そんなさなかに登場した月額定額の音楽ストリーミング。サービス開始1カ月半で620万ダウンロードと、ロケットスタートを決めたのはLINEミュージックだ。音楽を聴くだけでなく、友人とシェアしたり、アーティストが公式アカウントを利用してユーザーとコミュニケーションしたりできる点が強みだ。ターゲットはライトな音楽ファン。10代の若いユーザーも取り込むために、通常料金の300円~1000円から100円~400円を値引く「学割プラン」も備えた。
LINEは2012年から音楽サービスの搭載を宣言してきたが、レコード会社の許諾を得られず、サービス開始に至っていなかった。CD販売が市場の8割を占める日本において、小規模のストリーミングで協力を得ることは容易ではない。今回のサービスは昨年6月、舛田淳上席執行役員(現在は取締役)がソニーに楽曲提供を直談判したところ、「現状のサービスではライトユーザーに届かない。一緒にやらないか」とソニーの村松俊亮取締役から“逆提案”を受け、開発を進めたものだ。
LINEミュージックの高橋明彦取締役は「この2~3年、海外の成功事例も広がり、ストリーミングが音楽業界を殺さないことがわかってきた。1年前と違って今回は新曲が聴ける。LINE上のコミュニケーションにも厚みが出る」と期待を込める。
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