地方経済疲弊にリーマン破綻が追い討ち、続々と赤字に転落する地銀
「まさに泣きっ面に蜂」。北國銀行関係者が顔を歪める。
北國銀がメインバンクを務めてきた東証1部上場の中堅ゼネコン、真柄建設が民事再生法の適用を申請して事実上倒産したのは、今年7月5日のこと。それからわずか2カ月余りにすぎない9月中旬、同行を再び“悲劇”が襲ったのだ。
日産プリンス石川販売や日産サティオ石川など地元・石川県を営業エリアとする日産系ディーラー3社と、米国投資銀行大手、リーマン・ブラザーズの連続破綻--。これにより、ディーラー3社に対する貸出債権36億7400万円のうち、担保などで保全されていない25億円が焦げ付く見通しとなったうえ、保有していたリーマン発行の円建て普通社債20億円が無価値となるおそれが出てきたのである。
真柄破綻を受け、北國銀は7月10日、2009年3月期業績予想の減額修正に踏み切っている。47億円の貸出債権が回収不能となり、期初に30億円の黒字を見込んでいた9月中間期の最終損益は10億円の赤字に転落。通期ベースでは何とか黒字を確保するものの、期初予想の60億円が20億円へと激減するというものだ。
そんな中、降って湧いたともいえる新たな倒産劇。同行ではリーマンなどの破綻が業績に与えるインパクトについて「状況を精査してまとまり次第、公表する」としているが、想定された損失リスクがすべて現実化すればもはや、通期でも最終赤字への転落は不可避だ。行内の一部からは「こんなことになるのなら、真柄を潰させるんじゃなかったな」といった声も聞こえてくる。
メガバンクが逃げていつの間にかメインに
北國銀だけではない。今、地域金融機関の経営が苦境に立たされている。サブプライムショックを発火点とした景気後退色の強まりを受け、昨年秋以降、与信コストが急速に膨らみ、収益・財務基盤をむしばみつつあるのだ。今年4~6月期に地銀110行が強いられた不良債権の損失処理額は1488億円。前年同期に比べて665億円も増加した。
そして、こうした与信コスト膨張の最大の要因とされているのが、「未曾有」(金融筋)といわれる建設・不動産業の倒産ラッシュだ。帝国データバンクの集計によると、今年上半期の建設業の倒産件数(負債金額1000万円以上)は1633件で前年同期比16・2%増、不動産業は201件で同7・5%の増加。さらに8月には建設が307件で前年同月比12・9%増、不動産が33件で同37・5%増となるなど、ここに来てその増勢ぶりには一段と拍車がかかりつつある情勢だ。
アーバンコーポレイションに創建ホームズ、セボン、都市デザインシステム……。8月はしかも、大型倒産続発とあって、負債総額ベースで見れば、建設・不動産業界だけで全業種の7割強を占めるという超突出ぶり。「まず新興不動産会社が経営に行き詰まり、大口の焦げ付きが引き金となって工事を請け負っていた建設会社も破綻するという悪循環」。三井住友銀行幹部の一人は、その一極集中化の図式をこう解説する。