「ゾンビ施設」増殖で地方は大変なことになる 学校だけでも年間500校も廃校になっている
だが、こんな幸せな「余生」を送れる公共不動産はそれほど多くはない。国土交通省の推計によると、わが国の不動産約2400兆円のうち、国及び地方公共団体が所有する不動産は全体の24%に当たる約570兆円(590兆円という説もある)。企業所有の不動産約470兆円よりも約100兆円多い。そのうち、地方公共団体が所有する不動産は約420兆円という。
これだけの資産を持ちながら、地方公共団体が保有する公共施設やインフラ資産(道路、橋梁、上水道等)の現況をきちんと把握し始めたのはここ数年のことだ。公共建築の約半数が築30年を超しており、今後は施設の維持・管理、更新費用が膨大になることが見込まれる。
それに気づき、危機感を抱いた国が関係省庁連絡会議で「インフラ長寿命化基本計画」を策定したのが2013年11月。それから1年後には、総務省が地方公共団体に対して公共建築を含む公共施設の総合的かつ計画的な管理を推進するための「公共施設等総合管理計画」の策定を要請した。
それとほぼ同時に、公共不動産の可能性を探る試みが民間の手によって始まった。2013年には、前出のオープン・エー代表の馬場正尊氏が公共空間利活用の提案をまとめた『RePUBLIC 公共空間のリノベーション』を出版。2年後には、公共R不動産のサイトが立ち上がった。
誰に頼まれたでもなく立ち上げたサイトだが、作ってみると一部行政職員だけでなく、カフェや衣料販売大手も含む民間企業からの問い合わせが殺到。空いている公共施設や公園を使いたいと思っていたものの、どうアプローチしていいか分からない、教えてほしい、そんな声だ。ITベンチャーやスタートアップ企業からも廃校を借りたいと相談が相次いだ。公共空間を使いたいというニーズは確実にあったのである。
「それ以前にも空き物件情報は公開されていた。でも、それは一般の人の目が届かない行政サイトの奥深くにあった」と馬場氏は語る。「しかも、民間が借りる、使うといったスキームはなく、あるのは払い下げという上から目線の手法だけ。今では一般的になったサウンディングという事前調査の手法も横浜市が使っていたくらい」
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