明治時代の法律を引きずる日本の「生産性」 「時間給」思考一辺倒ではもはや通用しない

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先端のテクノロジーでは、生産性を数値化することも可能になってきています。昨年行われた経済産業省主催の「HR-Solution Contest ―働き方改革×テクノロジー―」でグランプリを受賞した株式会社JINSでは「JINS MEME」というプロダクトを開発しています。これは、眼球の動きと瞬きにより集中力度合いを「%」で定量的に測定するメガネ型ウェアラブルデバイスです。今後は、こうしたデバイスの導入によって人間1人当たりの生産性も可視化されていき、人事の実務にも生かされる日も来るでしょう。

また、生産性向上を成し遂げるためには、最終的には「投資に資金を投入できるか」という問いもつねに突きつけられます。これは経営判断の問題ですから、判断ができるのは経営者しかいません。

そのため、働き方改革は現場に丸投げしてはならないのです。実際の例としても、働き方改革を率先して行うことを決定したある会社では、社長以下役員が取引先に対する説明行脚を行い、理解を求めたという例があります。働き方改革は、人事部門だけが考えるものではなく、経営層・現場と一体となって取り組む必要があるのです。

「時間×数字」の人事評価はやめる

そして、人事評価方法は「時間×数字」をベースとした長時間労働前提の評価制度だけではもう立ち行きません。それでは結局長時間働いた人が優遇されるため、労働時間を減らすインセンティブが働かないからです。

現代において意識すべきは「時間当たり生産性」という概念です。これは売り上げの総量で評価するのではなく1時間当たりにいくら売り上げたかという「時間当たり売上量」によって評価を行うというものです。現にこうした評価を導入している企業もすでにありますが、この方法であれば社員も生産性を上げれば評価が上がるわけですから、モチベーションアップにつながるでしょう。

現在国会では、「働き方改革法改正」として、時間に縛られない柔軟な働き方を後押しする、高度プロフェッショナル制度などの審議が予定されています。現代の働き方からして「生産性」をどう測るべきなのか、そして企業はどのように評価をすべきなのか、一人ひとりが改めて考えるべき時代にさしかかっているといえるでしょう。

倉重 公太朗 倉重・近衛・森田法律事務所 代表弁護士

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くらしげ こうたろう / Kotaro Kurashige

慶應義塾大学経済学部卒。第一東京弁護士会労働法制委員会 外国法部会副部会長。日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員。日本CSR普及協会雇用労働専門委員。労働審判・仮処分・労働訴訟の係争案件対応、団体交渉(組合・労働委員会対応)、労災対応(行政・被災者対応)を得意分野とする。企業内セミナー、経営者向けセミナー、社会保険労務士向けセミナーを多数開催。著作は20冊を超えるが、代表作は『企業労働法実務入門』(日本リーダーズ協会 編集代表)、『なぜ景気が回復しても給料は上がらないのか(労働調査会 著者代表)。

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