2020年「チョコレート危機」は本当に来るのか カカオの需給安定は消費国の支援次第だ
世界カカオ財団(WCF)は2015年に「ココアアクション」プロジェクトを始動。2020年をゴールに、ガーナとコートジボワールで30万人のカカオ生産者を対象に、経済的自立、高度な農作業スキルの習得を目指し、活動を進めている。このプロジェクトには世界大手のハーシー、マーズ、ネスレ、モンデリーズ、フェレロ、バリーカレボー、カーギルなどの9社が自主参画している。
世界第2のカカオ生産国ガーナでは日本のNGOが活動する。貧困のためカカオ農家の子どもが人身売買されるケースがあり、その構造改善のための支援を続けているのだ。「生産者の生活が成り立たなければ、カカオ生産は続かない。消費者も企業も生産地に関心を持ち、チョコレートを取り巻く良い状況を作っていきたい」(認定NPO法人「ACE」事務局長白木朋子さん)
また、立花商店の生田渉さんは、カカオ豆の輸入商社の立場で、カカオ生産者とチョコレート生産者を結ぶ。「世界のカカオ・チョコレート業界が問題を受けて大きな予算を割き、支援や取り組みを始めている。ビーントゥバーなどのトレンドにより、品質が高い豆に高い買値が付く市場が登場し、チョコレート生産者や個人が以前よりカカオ生産者に注目するようになったのもすばらしい」。
新たに2050年問題も
2018年1月には、新たに「カカオの2050年問題」が報じられた。米国海洋大気庁(NOAA)によると、地球温暖化により一定の気温・湿度になると、2050年にカカオの木が絶滅するおそれがあるというのだ。カカオは平均気温が27度以上、高温多湿な限られた条件下でしか育たない。気候変動、病害、農家の貧困、後継者問題――カカオ栽培を取り巻く問題は多い。しかし、生産国側の問題が明らかになる度に、消費国側による研究・支援が進む。カカオとチョコレートの需給バランスは、その結果のようにも見えてくる。
カカオ生産者とチョコレート消費者の経済的格差は依然大きく、「チョコレートを見たことがない」というカカオ生産者は珍しくない。「カカオの生産国からは、日本企業からの支援やCSR活動の拡大を求める声が大きい」(立花商店 生田さん)。
2020年、2050年といわず、私達消費者が永遠にチョコレートを楽しむためには、カカオ生産者に意識を向け、さまざまな問題を理解しなくてはならない。近年カカオの国際相場の低迷もあり、生産者の収入は十分ではない。引き続き、世界中のチョコレート関連企業による継続的なカカオ生産者支援は不可欠であり、チョコレートを楽しむ私たちも、それぞれの立場でカカオ生産国の現状を理解し、支えることが必要になるだろう。
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