2020年「チョコレート危機」は本当に来るのか

カカオの需給安定は消費国の支援次第だ

【コートジボワール】バリーカレボー社の支援地域で働くカカオ農家の女性 ©️バリーカレボー社

担当者はこう話す。「2010年ごろディスカッションされていた古い話題ですね。私たちはそういう類のステイトメントや予測の発信はしていません」。そして「確かにチョコレートのバリューチェーンに問題はある」としたうえで、それよりも、といった感じで「私たちはカカオのサステナビリティ(持続可能性)のために生産者支援プロジェクトを立ち上げました。2025年までに目標を達成します」と、進行中のプロジェクトの話を膨らませた。

実際のところ、現状はどうなのか。2017年11月発表のICCOのデータによると、2016/17シーズンの世界全体のカカオの需給は、前シーズンより生産量は増え、カカオも余剰となっている。2010年からの推移で、供給不足幅の大きな年もあったが逆もあり、7年間ではトータル30万トン強の余裕がある。予測されていた新興国でのチョコレート消費が想定ほど伸びておらず、カカオの需給はそれほど不安定ではない。

この背景には、世界中のチョコレート関連企業による、カカオ生産農家への支援がある。2020年問題の出所とされる報告書(今は非公開)をたどると、実は「2020年までにカカオが100万トン不足する」と書かれているわけではなく、「消費が年率2%増加すると想定すると、2020年までにカカオ豆の生産量が100万トン以上増えないと需要に追いつかなくなる」と記されていた。

これはチョコレート業界全体が、世界のカカオ豆の安定供給に向けて生産者をサポートし続けなくてはならない、というメッセージだったことが読み取れる。

世界のチョコレートメーカーが支援に乗り出した

カカオは、西アフリカ、中南米、東南アジアなど、主に赤道から南北緯度20度以内の限られた条件下でしか育たない。世界のチョコレートメーカーの取り組み例として、バリーカレボー社(スイス)は「フォーエバーチョコレート」というコミットメントを2016年11月に発表した。2025年までに50万人以上のカカオ農家を貧困から解放し、児童就労を根絶するのが目標だ。「西アフリカのカカオ農家の60%が、世界銀行が提唱する貧困線よりも低いレベルの生活を送っています。この事実はカカオ農家の作業改善の妨げになっています」(バリーカレボー社)。

【ペルー】明治が開催するファーマー・トレーニング・スクール。現地との信頼関係を築くことから始まる地道な活動だ ©️明治

ネスレ社、ハーシー社、マーズ社は2020年までに、カカオ豆の購入を100%サステナブルカカオ(公正取引・人権尊重・地球環境に配慮した栽培などの条件を満たしたカカオ)に切り替えることを決めた。日本では、明治が「メイジ・カカオ・サポート」として、ガーナ、エクアドル、ベネズエラなどのカカオ産地で生産者向けにカカオの栽培技術を教えるスクールを開講している。独自のカカオ豆の発酵法を伝えて高品質カカオを栽培してもらい、高価格で取引することで農家を収益面でもサポートする。

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