優秀な人が陥りやすい「無意識の忖度」の罠 境界条件を外せば「必ずできる」に近づく

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たとえば、あなたの会社で販売チャネルについて、「うちの会社の商品は、子会社である販社経由でしか売らないことになっている」という決まり(境界条件)があるとすれば、それを外して自由に考えてみる。

「どんな販売チャネルも使えるなら、社として初めての直販も、大手卸経由も、ネット販売も選択肢となるな」とアイデアを広げて、より高い目標の実現を目指すのだ。

頭の中で検討しているだけなのだから、リスクもないし反対意見も出ない。「あれもできる」「これもできる」と面白がりながら発想していこう。

「面白がりながら考え、発想を広げる」のは案外難しい

ところが「面白がりながら考え、発想を広げる」というのは、案外難しい。

「いきなり新しい取り組みを3つも同時に行なうのはリスクが高すぎる。1つに絞ろう」

「想定される投資や経費を考えたらインターネットだけを試すのが現実的だろう」

「直販を提案したら、営業本部長の猛反対に遭うのは見えているな」

境界条件が染み付いているゆえに、自分の頭の中でさえ、忖度をしてしまうのだ。

検討する段階で境界条件を忖度するというループにハマると、発想の新鮮さ、自由さ、広がりはたちまち消える。考えることを面白がるどころか、分析と否定に終始する「アラ探しの達人」に逆戻りしてしまう。

最後の意思決定は別のプロセスでやるべきことだし、場合によっては経営陣や上司など、別の人が判断すればいい場合もある。

境界条件を広げないと高い目標は達成できない。ニワトリとタマゴのような関係であり、理不尽なくらい高い目標を立てる(参考:前回記事「優秀でも『なぜかできない人』の目標の立て方」)と、境界条件も広げざるをえなくなる。これに伴い、発想も大きく広がってくるものだ。

理不尽なまでに高い目的・目標を目指す「ストレッチ思考」と、必ずできると信じて面白がる「メイクイット思考」を組み合わせて考えることで、境界条件を外すトレーニングを続けていこう。

山梨 広一 元マッキンゼー・シニアパートナー

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やまなし ひろかず / Hirokazu Yamanashi

1954年東京生まれ。東京大学経済学部卒業。スタンフォード大学経営大学院(経営学修士)修了。富士写真フイルムを経て、1990年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。1995年からパートナー、2003年からシニアパートナー。小売業、消費財メーカーおよびその他業界の企業の戦略構築や組織改革、マーケティング、オペレーション改革など、マッキンゼー日本支社において最も豊富なコンサルティング経験を有する。2010~2014年まで、東京大学工学部大学院TMI(技術経営戦略学専攻)で「企業戦略論」の講座を指導、また同大EMPにて「消費論」の講義を行っている。2014年、マッキンゼー退社後、イオン株式会社執行役を経て顧問。2016年から株式会社LIXILグループ取締役、東京都顧問、マッキンゼーシニアアドバイザー。著書に『プロヴォカティブ・シンキング 面白がる思考』『シンプルな戦略 戦い方のレベルを上げる実践アプローチ』(ともに東洋経済新報社)、『マッキンゼーで25年にわたって膨大な仕事をしてわかった いい努力』(ダイヤモンド社)、『3原則 働き方を自分らしくデザインする』(SBクリエイティブ)などがある。

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