優秀な人が陥りやすい「無意識の忖度」の罠 境界条件を外せば「必ずできる」に近づく
優秀な人の多くが、そういう上司や先輩の気持ち、感情を忖度できるから、「やってはいけない」「やらないほうがいい」という境界条件を思考の段階でも設けてしまいがちなのだ。
歴史や伝統がある組織ほど境界条件は多いだろう。その中には大切なものもあるが、過去の遺産であり、現在では重要でなくなっているものや、「これを外すことで大きな成果が得られるなら外してもいい」というものも多く含まれている。
「社長がやらないと言っていた」というのも、実は無意識のうちに忖度していることで、高い数字を達成するためなら社長もやれと言うかもしれない。事業部間で競争してもかまわないかもしれない。それなのに最初から、「社長の意に背いてはいけない」「これはうちの事業部の範囲ではない」「隣の事業部の領域に踏み込んではいけない」と決めつけていることは多いのではないか。
日々同じことを繰り返すルーティンワークなどでは、境界条件を熟知し、踏襲することが大切だし、仕事の効率化にも役立つ。しかし、高い目標、難問、改革などに挑むときは、境界条件を忖度することが思考の足かせになる。
最初から「できない理由」を考えて忖度をしていたら大きな成長や改革につながる発想は生まれず、小さくまとまった予定調和の解決策しか出てこない。境界条件は、検討や企画の段階では無用のものだ。
不要な境界条件を外す3つのステップ
可能性を面白がる「メイクイット思考」では、意図的に、意識的に、境界条件を1つひとつ外すことによって、無意識の忖度の罠に陥ることを避けられる。
不要な境界条件をはっきりと見えるかたちで外していくには、次のステップを踏むとよい。
ツリーを使って、境界条件の種類を網羅的に書き出そう。
まずは法律・規制、コンプライアンス、倫理観など、組織を超えて共通する厳格なものから始めるとよい。次に自分たちの組織が大切にしていること、企業理念・価値観、ビジョン、事業領域などを書き出していく。たとえば「わが社は近隣環境にマイナス影響を与えかねない事業はしない」と言ったのはこの範疇に入るだろう。
そのあとに自社の中長期的な戦略や経営計画、経営資源、事業モデルといった項目が続く。さらに自社の規制・規定・制度、業務上の慣行、組織風土、長年のしきたりや不文律など、細かいものやソフトなものが続く。こうして項目をツリーで書き出したあとに、それぞれの項目の具体的な境界条件をリストアップしていく。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら