日本関与の「石炭火力発電」に反対運動が激化 インドネシアで住民提訴、許認可無効判決も
インドネシア政府はこうした動きに危機感を強めるとともに、昨年4月12日、開発を一気に推し進めることを目的として「2017年政令第13号」を制定した。チレボン拡張計画に関する行政訴訟で違法判決が出されるわずか5日前のことだ。
同政令は「国家戦略上、価値のある活動は、既存の空間計画に規定されていない場合であっても推進可」とするものだ。これを踏まえて、チレボン拡張事業を担うCEPRは新たに環境許認可を取得する一方で、JBICなどは同許可が新政令と整合的であると見なして融資に踏み切った。
とはいえ、住民から12月に起こされた行政訴訟で環境許認可が再び取り消された場合、チレボンの拡張計画は暗礁に乗り上げる可能性がある。そうなった場合の影響について、JBICは「仮定の質問には答えられない」とする一方で、前出の波多江氏は「インドネシア国民にツケが回されかねない」と指摘する。
電力供給が一転過剰に
「新たな許認可が取り消された場合、JBICは融資契約に盛り込まれた条項(JBICの「環境社会配慮ガイドライン」順守)に基づき、融資の停止もしくは期限前償還を事業者に求めることができる。インドネシア財務省の保証もあるため、焦げ付くことはないだろう」と波多江氏は見ている。民間銀行による融資の一部についても、政府系の日本貿易保険が保険を付与している。
もともと、日本が関与する石炭火力発電事業は、増大するインドネシアの電力需要に応えることを目的としてきた。日本側にとっては、「インフラ輸出」の目玉事業でもある。
しかし、近年、インドネシアでは電力需要の伸びが鈍化して電力供給の過剰問題が顕在化している。さらに注目を集めるのが、国有電力会社(PLN)の財務内容が急速に悪化していることだ。
2017年9月には、インドネシアの財務相がPLNのデフォルトリスクを懸念し、事業計画の見直しを求める書簡を、PLNを管轄するエネルギー鉱物資源相および国営企業相に送付していたことが判明。インドネシア国内で大きく報じられた。今後、PLNの財務状況がさらに悪化した場合、チレボン、インドラマユの両拡張事業にも影響が及ばないとも限らない。
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