日本関与の「石炭火力発電」に反対運動が激化 インドネシアで住民提訴、許認可無効判決も

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住民側が新たな訴訟を提起したことについて、チレボン拡張計画を担う発電事業会社に出資する丸紅およびJERAは「行政訴訟の状況を注視していく」と答えている。そのうえで両社とも、「引き続き発電事業会社では、現地住民との対話を重ねながら、奨学金の支給、離乳食の提供、小口融資、職業訓練およびマングローブでの植林など、さまざまなCSRプログラム(生計回復プログラム)を実施していく」などと説明している。

一方、協調融資で名を連ねるみずほ銀行など3メガ銀行は、「個別案件については回答を差し控える」としている。そのうえでみずほ銀は次のように回答した。

「大規模なプロジェクトファイナンスなどを実施する際に、地域社会や自然環境に与える影響に配慮して実施されるプロジェクトであることを確認するための金融機関共通の枠組み『エクエーター(赤道)原則』(以下、EP)を採択している。EP署名金融機関として、EPの対象となるすべてのプロジェクトについて、適切なデューデリジェンスと評価プロセスを実施する旨コミットしており、EPの規定に基づき、定期的にモニタリングを実施している」

環境や人権について詳細な検証を

既存のチレボン石炭火力発電所をめぐっては、これまでにも周辺海域での漁獲量の減少や、降下煤塵による塩田への影響などさまざまな被害が周辺住民から指摘されていた。

これに対して、発電会社に出資する丸紅は、「事業主体の現地企業から委託され、インドネシア・ガジャマダ大学が実施した調査では、いずれも発電所に起因するものではないと報告されている」と反論。また、不逞のやからによる圧力について、丸紅は「そのような事実は把握していない」としている。

インドラマユ拡張事業について、JICAは基本設計、入札補助、施工監理などを対象としたエンジニアリングサービス借款貸付契約をすでに締結しており、これに基づいて融資を実施している。その一方で、建設事業本体への融資については「現時点でインドネシア側から円借款の正式要請は受けていない」としたうえで、「判決内容をきちんと確認していく」としている。JICAでは正式な要請があった場合、「環境社会配慮ガイドラインに適合するかどうかをチェックしていく」(壽樂正浩・東南アジア第1課主任調査役)。

しかし、反対住民側はすでにエンジニアリングサービス業務にJICAが融資をしていることについても問題視しており、今年1月10日にFoE JAPANなどが河野太郎外相およびJICAの北岡伸一理事長宛てに、公的支援停止を求める要請書を送っている。

インドネシアでは、セメント工場建設に関する環境許認可が2016年10月に最高裁判所によって無効とされるなど、大型の開発プロジェクトが頓挫する例も出ている。

環境や人権状況、石炭火力発電所の事業性に関する詳細な検証が必要になっている。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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