プロ野球の「球場PV」はどこまで普及するのか スタジアムの稼働率向上は共通の課題だ

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これに対し、ビジターゲームのPVは、当日中継している放送局から映像の提供を受ける必要があり、球団単独では自己完結しない。球場という限られたキャパの範囲でしか集客ができないプロ野球興行では、キャパを超える需要が発生する繁忙時には機会損失が発生してしまう。

その一方で、プロ野球のホームゲームの開催日は年間に約70日しかない。12球団中、球場が自前でなく、管理運営する権利も得ていないのは北海道日本ハムファイターズ、読売巨人軍、東京ヤクルトスワローズの3球団だけ。残りの9球団にとって、残り約290日の稼働率向上は共通の課題のはずだ。

ビジターゲームのPV標準化は球団もファンも幸せに

2017年シーズンはソフトバンクもリーグ優勝決定戦と日本シリーズ2試合の合計3試合で、楽天もCSの8試合で、敵地開催ゲームのPVを本拠地で実施している。今のところリーグ優勝決定戦やCS、日本シリーズのPVはファンサービスの一環という位置づけなので、入場料はいずれも無料だが、無料だから人が集まったというわけではあるまい。

もしもシーズンを通してビジターゲームのPVを標準化することができたら、ファンは喜ぶだろうし球場の稼働日数も大幅に増える。パ・リーグ6球団は既に、球団が外部の映像制作会社にオペレーションを委託する形で基本映像を制作している。基本映像には実況も解説も付けており、6球団の基本映像を集めてインターネットで有料放送しているパ・リーグTVも、6球団分網羅した番組の配信開始から今年で10年になる。

既に一定のノウハウが蓄積されているはずなので、ビジターゲームのPVを標準化するためのインフラとして活用できそうな気がする。もともとパ・リーグTVは、応援しているチームのゲームはホーム、ビジターともに見たい、というファンのニーズに応えるために誕生している。

球団が基本映像を制作するとテレビ局と利害が対立するため、親会社グループにテレビ局があるセ・リーグでは球団間の足並みが揃わず、実現のためのハードルはパ・リーグよりも高そうだが、できるところから始めてみてほしいと思う。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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