ただ、テクノロジーのスキルを持つ女性人材自体も少なく、普通の募集方法ではなかなか集まらない。そこで出産などで離職した後、スキルを生かせていない女性を、インターンシップで発掘しようというわけだ。「日本企業は採用時にブランクをシビアに見ることが多いので再就職しにくい。埋もれてしまった有能な女性は全国にいるはず」と杉田氏。2018年度の採用予定は5~10人程度。2019年度も続けていく意向だという。
本来、インターンシップといえば、「学生の就業体験」を指すのが一般的だ。しかし、近年は日本マイクロソフトのように、社会人や学生以外の人を対象にした、インターンシッププログラムが各所で見られるようになった。成果をあげているものもある。
たとえば、公益財団法人東京しごと財団が運営する「東京しごとセンター」では、2014年、1度も就職経験のない29歳以下の求職者を対象にした「若者正社員チャレンジ」を始めた。マナー講習を受けた後、企業で20日間試しに働いたうえで、参加者と企業の双方が合意すれば就職できる内容だ。2016年度は552人が参加し、就職にこぎつけた人も多いという。「受け入れ先の多くはIT企業。よい人材が確保できると、毎年のように、利用する企業もある」(正規雇用対策担当課長の永阪彰氏)。
また、同じ東京しごとセンターの「しごとチャレンジ65」は、65歳以上のシニアが興味のある企業で、1日3時間で最大3日間、試しに働くことができるプログラム。2016年度は136件の参加があり、約半数が受け入れ先に就職したという。
育児をしながらまた働き始めたママ
育児後の再就職に道を開くインターンシップもある。愛知県春日井市を拠点にするNPO法人あっとわんでは、2014年から、管理運営する春日井市東部子育てセンターで、「ママインターン」を実施している。
育児をしながら働きたいと考える女性が対象で、週2回、10~14時の間に、センターの受付業務や子供の遊び相手、子育てイベントの運営業務などを行う内容だ。期間は半年間が基本で、1日2000円の交通費などの実費も支給している。
これで仕事に興味を持ち、4人があっとわんの正規スタッフになったという。「ほかの参加者からも『子育てしながら働くイメージがわいた』『自分がいなくても子どもが立派に留守番できるとわかった』と喜びの声をいただいています」(代表理事の河野弓子氏)。
この実績が評価され、2016年からは春日井市の委託事業にも選定され、その運営も任されている。一般企業を受け入れ先にし、初回から17人が参加した。就職をあっせんする目的のプログラムではないが、これがきっかけで、受け入れ先に就職した人もいるそうだ。
共通して言えるのは、体験者のメリットは、自分に合う職場かどうかを見極めたうえで就職できること。ブランクがある人にとっては、「ならし運転」の効果もある。一方、受け入れ先にとっても、人材を見極めてから採用できる。双方にメリットがあるわけだ。
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