もっとも、既存のプログラムの大半は、今の仕事を続けながら参加することができない。「他の仕事に興味があるので試してみたい」というニーズには応えられていなかった。そうしたニーズを受けて、今の仕事を辞めずにほかの仕事が体験できる仕組みを用意したのが、仕事旅行社が2017年4月から行っている、「おとなのインターン」だ。
そもそも同社は、有料で1日限りの職業体験ができる「仕事旅行」というサービスを、2011年から手がけていた。その過程で、体験先に感銘を受けてそのまま転職した、というリクエストを複数の人から受けていたという。「それなら体験をきっかけとした転職サービスがあってもよいのではないかと考えた」(代表取締役の田中翼氏)。
可能な受け入れ先は約40社。教育や飲食、広告、町おこし、金属加工など、業種も豊富だ。体験期間は、1日だけのものもあれば、数日~数カ月間におよぶものもある。多くの場合は体験後、その企業で正社員になる道が開かれている。
職場体験で転職前の不安も解消できた
このサービスを利用して転職を果たしたのが、デザイン事務所で働いていた今井一成さん(仮名・30歳)。在職中から「さらに制作の前段階から携わってみたい」と考え、企業のブランディングを手がける「むすび」という会社で、3日間の職場体験をした。1回あたりの時間は2時間と短かったが、クライアントと行うワークショップやコピーライティングを疑似体験することで、仕事の大枠がわかり、採用面接を希望したそうだ。
「私も転職にあたっての不安が解消されましたが、企業側も不安だったはず。私のような未経験者を受け入れていただけたのは、インターンがあったからこそだと思う」と、今井さんは振り返る。今後はユーザーからの要望が多い、「1回の時間は短いが、週1回ペースで長期間働ける」受け入れ先を増やしていきたい、と田中氏は目論む。
いずれも採用色の強い取り組みだが、一方で、会社を背負って立つ人材を鍛えるためのインターンシッププログラムもある。その代表が日本生産性本部のサービス産業生産性協議会が運営する「大人の武者修行」だ。2014年から始まり、3年間で約100人が参加している。
「始めたきっかけは、セミナーなどを開催しても、その後、職場で改善につながったケースが少なかったから。それならば、実際に優良企業の職場で一緒に汗を流せば、その企業の考え方やノウハウを職場に持ち帰っていかしてもらえるのではないかと考え、企画した」と、サービス産業生産性協議会の柿岡明チーフプロジェクトマネジャーは語る。
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