「大人のインターンシップ」は実際に効果ある 転職から育児・介護後の職場復帰も面倒見

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「大人の武者修行」の参加者(修行者)の主なターゲットは、サービス産業の中小企業で働く次世代の経営人材。ほかのプログラムと大きく異なるのは、条件を満たした中小企業の社員が対象であり、必ず、勤務先の許可が必要だということ(会社単位の参加も可能)。研修費も勤務先が支払う。ただ、経済産業省の補助事業なので、条件を満たすと、研修費の半分は国から補助される。補助を受けた場合、研修費は、期間が10日間以内の場合は5万円。交通費や宿泊費などの実費も半分補助される(上限は合計で100万円)。

受け入れ先は約100社。いずれも、サービス産業生産性協議会の表彰制度で受賞歴のある優良企業で、地域は北海道から鹿児島まで分布している。ホテルや飲食、バス会社、ビルメンテナンス、自動車ディーラー、システム開発など、多様な業種がそろう。

修行者は働いてみたい企業を選び、最短3日間から働ける。最大で3カ月、平均では1~2週間程度の人が多いそうだ。期間が長いことから、志願書の提出や面接などの審査がある。仕事内容は企業によって異なるが、「武者修行」だけあって、客先に出向いたり、会議に参加したり、と社員に近い形で働くことが多い。

優良企業に出向きノウハウをつかめ

名古屋で行われた「大人の武者修行」の説明会。事例を説明しながら中小企業の参加を促している (筆者撮影)

静岡で観光関連事業を手がける、TTCの経営企画室経営企画部課長の田村典靖氏は2016年、三重県南部のみかん農園「かきうち農園」で、約2週間働いた。交通不便な土地にありながら、県外からも若者がわざわざ就職する農園だ。田村氏はここで収穫などの農作業をこなす一方で、かきうち農園の垣内清明社長と大学の商品開発会議や交流会などに出向いて、商品のプレゼンまでさせてもらったという。

「実務もさることながら最も勉強になったのは、垣内社長から『どんな考えにもとづいて、経営判断をしているのか』を伺えたこと。先を見据えて動かなければならないことや、部下を成長させるための関わり方など、マネジメントに必要な視点を学ぶことができた」と田村氏。勤務先に復帰してからは、学んだことをもとに、自社商品やサービスを見直したり、部下への指示の仕方を変えたりと、マネジメントに役立てているそうだ。

「その他にも、『社員同士が意見を伝え合うカードをつくった』『出張サービスを立ち上げた』『ダイレクトメールの送り方を変えた』など、さまざまなアクションにつながったという事例が数多く生まれている」(柿岡氏)。

このプログラムは、受け入れ先にもメリットがある。1つは、修行者の意見によって、今まで気づけなかった改善点や課題を発見できることだ。修行者に対し、修行最終日に、受け入れ先の改善レポートを出してもらう企業もあるという。もう1つ、期間限定でも新顔が加わること自体、停滞した職場の雰囲気を活性化させる効果もある。毎年のように、受け入れ続けている企業は何社もあるが、それはこうした理由からだ。

学生でなく、社会人を対象にした”大人のインターンシップ”は、参加者と受け入れ先の双方にメリットがある。現状ではあまり知られていないが、成功例が広まれば、一気に普及が進む可能性もあるだろう。

杉山 直隆 オフィス解体新書・代表

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すぎやま なおたか / Naotaka Sugiyama

1975年生まれ。専修大学法学部卒業後、カデナクリエイト入社。ビジネス誌やビジネス書、企業の社内報・PR誌の執筆・編集を主に手がける。2016年に独立(屋号:オフィス解体新書)。社会人インターンシップ情報を紹介するブログメディア「30歳からのインターンシップ」を立ち上げ、取材活動をしている。共著に『課長・部長のための労務管理 問題解決の基本』『図解&事例で学ぶ入社1年目の教科書』『クイズ商売脳の鍛え方』など。

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