中東の超エリートたちが続々と起業するワケ イスラエルの特殊部隊率いた元司令官が語る

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CEOを務めるイスラエルのベンチャーキャピタル「ペリテック」のオフィスにて(コーヘン氏本人提供)

イスラエルには、失敗を恐れない精神があり、それがスタートアップを育む源泉になっています。今世界がものすごいスピードで変化している中で、綿密にすり合わせなどを重ねているうちにイノベーションはどんどん進んでゆく。やってみないとわからない、失敗もチャンスに変えるという大胆な思考回路で、スピーディに挑戦する精神が必要になってきます。

規律を重んじて慎重に物事を進める日本企業の特性と長年培ってきたすばらしい技術力が、イスラエルの精神とうまく結び付けば、世界で他の有力企業と太刀打ちできる大きな成果が得られるだろうと確信しています。

――サイバーセキュリティ分野では日本がイスラエルに学ぶことも少なくない?

そうですね。イスラエルは特に、長きにわたってサイバーセキュリティ分野に投資をしてきており、今や新たな成長エンジンとして世界からも一目置かれています。私の教え子でもサイバーセキュリティ分野で起業して成功している人たちは少なくありません。攻撃を受けてからでは遅いのです、敵の動きを分析して予測して先回りすることがこれからは求められています。

オリンピックも控え脅威も増しつつあるサイバー攻撃から身を守るために、イスラエルが日本に大きく貢献できることに疑いの余地はありません。イスラエルの若者が軍で実際に培った、危機迫る状況下での思考回路や課題解決能力は、日本のセキュリティ分野にも今後大きく生かすことができるでしょう。

インタビューを終えて――教え子が明かす

最後に、8200部隊の元司令官の趣味は何だろうと素朴に興味が湧き、聞いてみると「庭いじりとジョギングです」と、なんとも身近な答えが返ってきて思わず心が和んでしまった。

コーヘン氏に直接逢って話した印象は、元サイバー特殊部隊の司令官という一見強面な肩書とは裏腹に、なんとも温和で優しい人柄だ。終始にこにことほほ笑みながらも、瞬時に質問の意図を理解して的確な答えを返す様子に、司令官時代に部下や生徒からも慕われていたことを偲ばせる空気感をまとっていた。

ちなみに前述したヨアブ氏は、実はコーヘン氏が率いた8200部隊の教え子。コーヘン氏へのインタビューを終え、ヨアブ氏に話を聞くとこう返ってきた。

「コーヘン氏は、8200部隊で仕えているときから本当に尊敬できる師でした。けれど、私が彼と個人的により強い関係を持つようになったのは、私が1年前に自分の会社を立ち上げてからのことです。彼にアドバイザーになってもらい、8200部隊の文化や経験が日本との協業にどのように役立つか、実に上質なインサイトを与えて貰いました。

コーヘン氏は日本のことをよく理解していて、イスラエルとの文化的な違いを踏まえたうえで、ここでビジネスを成功させるにはどのように相手を尊重して敬意を払うべきかや、複雑な問題に対しての現実的な対処法など、基礎をたたき込んでくれました。本当に尊敬しています」

除隊後に連携が一層強まったという8200部隊出身者の師弟関係。つまり、部隊在籍時以上に、卒業してビジネスを始めてから強固な関係を築き合うことで、師は教え子や後輩がスタートアップを立ち上げる際の強力なメンターとなるのだ。

世代を超えて除隊後もネットワークを活かして支え合う構図に、イスラエルのイノベーションが急速に繁栄してきた秘密が垣間見えてくる。スタートアップに多くの頭脳を輩出する「8200部隊」のプレゼンスは今後ますます、世界で高まっていくのかもしれない。

海野 麻実 記者、映像ディレクター

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うんの あさみ / Asami Unno

東京都出身。2003年慶應義塾大学卒、国際ジャーナリズム専攻。”ニュースの国際流通の規定要因分析”等を手掛ける。卒業後、民放テレビ局入社。報道局社会部記者を経たのち、報道情報番組などでディレクターを務める。福島第一原発作業員を長期取材した、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『1F作業員~福島第一原発を追った900日』を制作。退社後は、東洋経済オンラインやYahoo!Japan、Forbesなどの他、NHK Worldなど複数の媒体で、執筆、動画制作を行う。取材テーマは、主に国際情勢を中心に、難民・移民政策、テロ対策、民族・宗教問題、エネルギー関連など。現在は東南アジアを拠点に海外でルポ取材を続け、撮影、編集まで手掛ける。取材や旅行で訪れた国はヨーロッパ、中東、アフリカ、南米など約40カ国。

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