ドイツは国を挙げて、「2050年までに再生可能エネルギー80%」を目指しています。現在でも、同国のエネルギー 自給率は今でも40%近くあり、それ自体、日本の6%を大きく上回っています(再生可能エネルギーとは、水力・太陽光・風力・バイオマスなどからつくられる電気や熱の利用を指します)。
ではなぜ同国は再生可能エネルギー 80%を目指すのでしょうか。「地球温暖化防止のため」「パリ協定を守るため」などと言えば、その通りです。しかし、理由はそれだけではないのです。
理由は、もっと大きなところにあります。つまり、化石燃料などを使わない「低炭素化」を進めていくこと自体、技術革新を生み、将来の大きな産業の芽になるという確信があるのです。簡単に言えば、ドイツは「新しいことを積み上げていくことでビジネスチャンス が広がる」と考えているのです。それは「エネルギー大転換(ヴァンデベルデ)」と言われており、それこそ、国を挙げて 実践しています。
ドイツは「快適性」を損なわず、エネルギーを節約する
日本では考えにくいことかもしれませんが、ドイツでは社会のさまざまな局面で同じ方向を向き、その条件下で 競争しています。しかも、特筆すべきは、社会の中での快適性を損なわず、エネルギーを節約する姿勢です。
ドイツでは、住宅で使われるエネルギーを節約するのに、部屋が寒いのを我慢したりはしません。実際、同国ではここ20年くらいかけて、建物の高断熱化を実施してきました。
当たり前のことですが、高い断熱性の住宅を実現できれば、いったん作った熱は逃げにくく、部屋の温度が下がりにくくなります。同国ではこの政策を補助金など金融面も使って進めてきました。その結果、現在では多くのエネルギーを使う必要がなくなり、高断熱化住宅は、個人にとっても、十分に元が取れる状態になっています。
では、具体的にはどうやっているのでしょうか。ドイツでは、エネルギーを供給するときに、地域に船用のディーゼルエンジンを幾つか並べたコジェネレーション(cogeneration)の施設を設け、そこでエンジンを回しながら、熱と電気の両方をとる仕組みを広げてきたのです(日本でも、ないわけではありません)。
こうすると、オフィスでも普通の住宅でも、建物を使用する際、エネルギーの中で多くの割合を占める熱需要を、地域で調達することができるのです。その効率は100%に近いものです。
一方、日本はどうでしょうか。実は、暖房など多くの熱需要を電気で賄っていますね。これは主に、通常のエアコンに暖房機能がついていることが理由です。電気は熱からの変換効率が著しく低く、変換効率は30%程度と言われています。つまり、残りの70%は発電所で熱になっているのです。その熱を効率的に利用できることは少ないため、実に70%は発電所の近くで捨てられているというわけです。
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