「指示待ち族」にまともに怒ってはいけない 「自分の型」を無理強いしていませんか?

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先に出てきた、男性新入社員に「退職」と口にされた話ですが、私はそのとき衝撃とともに、「わお、私とはまったく違うコミュニケーションのタイプなんだわ、この子!」と理解できてしまいました。そして、よくよく思い返してみると、彼はとても賢い人で、指示も解も仰ぐけれど、それを着実に自分の経験にしていることに気づいたのです。「主体性」の名のもとに、私のような昭和タイプが大好きな、「チャレンジ」を果敢に行ったり、がっつり自己主張することはないけれど、彼なりに確実に少しずつ経験から学び、成長していると思ったら、「こちらの好みの問題で、彼に窮屈な思いをさせてきちゃったなー」とすとんと考えることができました。

自分のやり方を後輩たちに仕込んでいく、というより、おそらく今は、後輩たちの強みをそれぞれに伸ばしていくように、伝え方もやり方も、柔軟にコントロールしていくことが求められる時代だと感じます。自分とはまったく特性の違う人と付き合っていくことは、今後のビジネス人生でもきっと役に立つ力になるはずですから、「指示待ち後輩」を実験台にするくらいのつもりで、いろいろアプローチして育ててみたらよいのではないでしょうか。

意図をくみ取らないなら、わかるまで意図を説明する。行間を読まないのなら、行間を作らない説明をする。指示を待っているなら指示を浴びるほど与えてみる。そして、少しずつ彼女が成功体験を積むのを一緒に見届け、認めてあげるようにしたらいいのではないかと思います。

「間違うのがいやだ」「自分は認められていない」と思っているようなタイプだとしたら、たっぷり指示をしてそのとおりに仕事が仕上がってきたときに、「正確な仕上がり」をまずは認め、具体的に褒めてみてはどうでしょう。そして、その中にその人が思う「改善ポイント」や意見を問うてみるとか。

自分自身が変わるきっかけにする

私は、先の男性部下とじっくり話す時間を作り、「勝手な思い込みで仕事を進めないこと」「行間を読みすぎず、事実をもとに仕事をしようとすること」を高く評価している、と具体的な事例をもとに伝えました。そのうえで、一つひとつの指示された仕事から何を学んだか、どう感じたか、についてちゃんと話してもらいたいと言ったところ、それから驚くほど関係性が変わりました。彼は、「あうんの呼吸」を疑うタイプだったし、私がそれを求めているように感じて、ずっとおかしいと思っていたそうです。

そこまで開いた会話をして初めて、彼の成長支援は楽になりました。彼なりのやり方があることを周囲に理解してもらうための努力を私がしていたのも知っていたようで、数年経ってから感謝の気持ちを伝えてくれました。うれしいことに、いまや彼はピカピカのエース社員です。今でも誇らしい存在です。

仕事がいっぱいあって、そのうえ、短い時間で仕上げて早く帰れと言われ、給料もそれほど上がらず、上からも下からもやいのやいの言われる。ちょっとは苦労をわかってほしいわ、と思う気持ちはよくわかります。でも、もう下っ端じゃないってことですよ。立派な「中堅社員」です。深呼吸をして、「私が成長するために、乗り越えるべき壁が現れたのね。乗り越えてやろう」と思ってみましょう。そして、自分自身が変わるきっかけにするといいと思います。来年の今頃は、今とは違った境地に至っているといいですね! 一緒に頑張りましょう。

堂薗 稚子 ACT3代表取締役

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どうぞの わかこ / Wakako Dozono

1969年生まれ。1992年上智大学文学部卒業後、リクルート入社。営業として多くの企業を担当し、数々の営業表彰を受ける。管理職として、多様な雇用形態の組織の立ち上げやマネジメント、『リクルートブック』『就職ジャーナル』副編集長などを経験。2004年第1子出産。2007年当時組織で最年少、女性唯一のカンパニーオフィサーに任用され、事業責任者、「リクナビ派遣」編集長を務める。2010年に第2子出産後はダイバーシティ推進マネジャーとして、社内外女性のメンターを務めつつ、ワーキングマザーで構成された営業組織の立ち上げ、マネジメントを担当し、彼女たちの活躍を現場で強く推進した。経営とともに真の女性活躍を推進したいという思いを強くし、2013年退職。株式会社ACT3設立、代表取締役。女性活躍をテーマに、講演や執筆、企業向けにコンサルティングなどを行っている。2013年2月、リクルート在籍時に東洋経済オンライン「ワーキングマザーサバイバル」連載に登場。FBのいいね!数が6000を超えるなど、話題となった。

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