私は社会人になってから25年経ちますが、このテーマは程度の差こそあれ、いつの時代も存在した問題である気がします。一方で昨今は、自分をしっかり持った若手が多いとも聞きます。もしかすると、先輩や上司サイドの仕事の依頼の仕方や、ゴール設定のあいまいさなどによって、若手から「ダメ先輩認定」されてしまい、「この人の案件は、指示されるまでやらない」と戦略的に指示待ちをされている可能性もありそうです。
もちろん、あなたにも言い分はあるでしょうし、彼女の問題がどの程度かわからないので決めつけられませんが、ある意味、この手の問題はもう卒業したいものです。つまり、私たち先輩の「彼女を変える」という発想は、捨てる去るべきときなのかもしれないと思うのです。そして、あなたと違う彼女の個性を理解することのほうが、あなたにとってずっと重要な気がします。
私も、彼女のような後輩や部下を持ったことが何度もあり、頭を抱え、イライラし、「どうしてこうなのか」「どう指導したら変わってくれるのか」と胃の痛い思いをしてきました。私自身、自分を変えるという発想はなく、結局は相手に変わってもらおうとしていたと思います。
「行間を読め」は身勝手な話
あるとき、1回り以上歳が下の男性新入社員が配属されたことがありました。自己主張の強いメンバーが多い会社であり職場だったのに、彼はとても寡黙で、なかなか心を開いてくれません。細かく指示すれば、きちんとやり遂げますが、「どうすればいいと思うか?」と聞くと「経験がないのでわかりません」と答えます。こちらとしては、間違っていてもいいから、「僕はこう思います」などと意見を聞きたい。でも表情をほとんど動かさないまま、「僕には意見は特にありません」「どうすればいいか教えてもらえればそのやり方でやってみます」と言うのです。最初は、反発されていると思っていたし、言い方にもカチンとくるし、「そんなんじゃだめだろう」と思っていました。
そんなある日、彼の顧客の件で打ち合わせをしていると、また指示と「解」を求められ、私は心底うんざりして、「そんな仕事の仕方をしていて何が楽しいの? 今のままじゃうちの会社ではやっていけないよ?」と言ってしまったのです。すると、彼はじっと考え込んだ後、「いつまでに退職届を出せばよいですか?」と言ったんです。にらんだり、とか、すねたり、とかではなく、明らかに普通に! 私はその瞬間を忘れられません。
別の女性メンバーは、「このミスするの、何度目?」としかったら、ごく冷静な表情で、「4回目くらいだと思います」と返してきました。これもかなりびっくりしました。大幅に遅刻して待ち合わせ場所に到着しないメンバーに、「どこにいるの!」と電話でしかったら、明るい声で「○○駅のホームです」と言われたことも。
疑問形で発言しているけれど、明らかにしかっていて、答えなど求めていないのは「行間を読めば」わかるはず、と思いがちです。でも、そもそも「行間を読め」なんて求めすぎで、身勝手な話なのです。コミュニケーションとは、相手に意図が伝わって初めて成立するのだ、と悟るべきでしょう。
昨今話題の横綱暴行事件で報道されているエピソードで、説教されているときにスマホをいじる後輩力士に、「こんなときに誰なんだよ!」と声を荒げたら「彼女です」と答えられて腹が立った、というような話がありましたね。想像にはなりますが、同じ部類の話かもしれないなと思いました。かーっと頭に血が上る気持ちは理解できるけれど、「ああ、こういうタイプの後輩だった」「私もまだまだダメだなぁ」と考えたほうがずっと気持ちが楽です。
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