稲田朋美氏「もう一度、防衛大臣をやりたい」

防衛大臣辞任後に考えたこととは?

多くの人には、批判されたことばかりが印象に残っているかもしれない。しかし、これは強く申し上げておきたいが、私の在任中、北朝鮮の相次ぐ核・弾道ミサイル実験、そして中国の海洋進出など、東アジア情勢は緊迫の度を増した。また、米国においてはドナルド・トランプ大統領が就任され、一時は日米同盟への影響が懸念された。

しかしながら、安倍政権は国民のご理解の下、外交・安全保障に全力を尽くし、防衛省・自衛隊も安倍首相のリーダーシップによりしっかりと機能したと信じる。私もジェームズ・マティス国防長官との信頼関係を築き、日米同盟にいささかの綻びも生じなかった。防衛大臣としての職責は果たせたと思っている。

そのうえで、確かに就任当初は面食らうこともあった。特に各組織の歴史的経緯や文化を実感した経験がなく、今にして振り返れば、時としてコミュニケーション不足のようなことが起こっていたと思う。したがって、防衛省・自衛隊のガバナンスに問題があったとは考えていないものの、私の経験不足により結果として批判を受けるような状況になってしまったことは重く受け止めている。

就任から1年近くを経て、ようやく全体が見渡せるようになり、ようやく私のカラーを出そうとした時点で辞任したことは、非常に残念だ。

私が大臣として特に心掛けたのは、若手職員、さらには自衛官の意見を聞くようにしたことだ。たとえば世界情勢に関する大臣への説明について、私は刻々と変化する情勢に的確に対応するため通常よりも頻度を上げて、毎日、行うようにしていた。その際、日本を取り巻く安全保障の環境やPKOを派遣していた南スーダンの情勢について、階級や制服組・背広組を問わずに最も詳しい職員から直接情報をとるようにした。

また防衛政策の分野ごとに若手のチームを作り、毎日、短い時間でも意見を聞くようにした。意外かもしれないが、防衛大臣が自衛隊の制服組と会う機会は背広組ほど多くない。したがって、現場の実情を知るべく、自衛官の皆さんと語り合う場面をなるべく作ってもらうようにし、各幕僚長との懇談も積極的に行った。

そうするうちに、かなり密な意見交換ができるようになり、私自身、防衛大臣として必要な安全保障に関する知識、情報を蓄積することができた1年だったと思う。また自衛隊の現場部隊の視察に可能なかぎり時間を割くよう努力したことで、現場の感覚も身近に感じ始めていたところだった。

就任当初はお互いにぎくしゃくしていたかもしれないが、少なくとも任期後半に関しては、職員との間に溝や軋轢があるとは感じなかった。

日本の技術力は非常に優秀

国家安全保障の問題を専門的に手掛けてきた政治家なら、防衛省の組織、陸・海・空の3自衛隊の歴史的経緯、さらには各自衛隊の文化など、防衛省・自衛隊の持つ空気に関するイメージがすでに構築されていると思う。私の場合、就任当初にそうした感覚がなかった点で、確かに不慣れな点でのハンディはあった。

ただし、むしろ空気に染まっていないことで、改革できることもある。安倍首相が私を防衛大臣に任命したのは、まさにそうした真新しい視点で新しい風を吹き込ませることを期待されたのだと思う。

また、防衛大臣に就任して1年近くを経るうちに、いろいろな背景や事情への理解が深まり、私なりに守るべき点と変えるべき点が見えてきた。たとえば、陸海空3隊の間には、歴史的経緯からか意識、組織の両面においていまだ隔たりがあると思う。一例は予算に関して、陸海空各隊で積み上げている現状だ。共通で行えば、費用対効果をより高められるのではないか。

いまはUC(制服組と背広組)の協働、各自衛隊間の統合も進んでおり、昔と比べればかなり改善されたが、制服組と背広組のコミュニケーションにはさらに改善の余地があるだろう。

次ページ調達についても、見直しが必要
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