大人が遊ぶ「荒木町」を彩る女性たちの正体 スナック「ゆず」にはまた帰りたくなる

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ママお手製のお漬け物。このほか、きんぴらやお鍋、ぞうすいと次々ママの手料理が出てきた(筆者撮影)

「ここは居心地が良いだけじゃなく、ママの手料理も最高。僕は手料理と珈琲を楽しみに毎日通っているんだ。ただ、途中でストップと言わないと、沢山の料理が出てきちゃうから気をつけないと」

ママの人柄に加えて、家庭料理で常連客の心をつかんでいるようだ。

歌う漫画家のおもてなし

「こんばんは~」

突然お店に入ってきたのは、着物の女性だった。三味線を背負っている。荒木町で唯一、女性三味線流しとして活躍する、歌う漫画家ちえさんだ。

漫画家を目指して名古屋から上京した彼女が人の縁で出会ったのは、日本最高齢の流しである新太郎師匠。すぐに弟子入りし、一緒に荒木町を流し歩くようになった。演歌歌謡曲を歌い、似顔絵を描き、人気を集めていく。

歌い始めると、店の雰囲気が一気に華やぐ(筆者撮影)

しかし、今年8月。新太郎師匠は帰らぬ人となった。75歳だった。その後もちえさんは、なじみ客が多いここ荒木町で活動し続けることを決意。本格的に三味線を習得し、今では民謡や歌謡曲も演奏できるようになったそうだ。

「私は“人の縁”に恵まれてここまできました。師匠との出会い、サポートしてくれるお店、なじみのお客様。それらすべてが私の財産です。少しでも荒木町に恩返しできるよう、特別なことがないかぎりは、荒木町限定で活動しています。今では、荒木町が私のホームタウンです」

遠方から会いに来るお客さんも多いというちえさん(筆者撮影)

ちえさんは平日の夜を中心に、荒木町のスナックや小料理屋などを回っている。

「時と場合にもよりますが、1日15~20軒ほど訪問しています。多いときは2~3回転することも。師匠と流していた頃からのお客様も多く、北海道に住んでいるお客様が私を呼ぶためにわざわざ荒木町で飲み会を開催してくれることもあるんですよ」

さっそく筆者も1曲お願いした。人生初である。料金は1000円から。“お気持ち”を足すかどうかはそのときの気分でいいそうだ。演目は「荒木町小唄」。のびやかな声と三味線の生音が心地良い。お客さんからは自然と手拍子が。

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