「はしご酒」や「センベロ(1000円でベロベロに酔える)」で有名な葛飾区立石。立ち飲み屋をはじめとした古き良き昭和の面影が残る、まさに“呑んべえの聖地”である。駅前アーケードにある「モツ焼き屋」や「立ち食い寿司屋」は、日中から酒をたしなむ常連で埋め尽くされる。店内は数人で満員だ。客同士の距離が近いからこそ、自然とコミュニケーションが生まれる。
ここ数年、駅前のシンボルである「吞んべ横丁」では、再開発によって多くの飲み屋が姿を消した。しかし、この街を象徴する魅力的なスナックはいまだに点在している。
立石の路地裏にたたずむ、その名も「サファイヤ」
「スナック女子(スナ女)」を標ぼうする筆者の本連載で初めて訪れる場所として、立石を選ぶことにした。
京成立石駅を降り、駅前アーケードを抜けて街道沿いに進むと、小道がある。さらに奥に進むと、妖しく輝く青色の看板が見えてきた。「スナック サファイヤ」だ。
オーソドックスな玄関風の扉には、料金表が張り出されている。外から料金がわかるため、初心者でも安心だ。ただ、中の音はまったく漏れ聞こえてこない。初めての店ということもあり、自然と緊張感が高まる。
それでは、扉を開けて中に入ってみよう。行きつけではないスナックを訪れる際、いちばん緊張する瞬間かも知れない。扉の向こうには何があるのか……。
店内は多くの常連客で賑わっていた。8~10名が腰かけられるソファー席と、3名が座れるカウンター席がある。想像以上に広い。
壁には、ママ一押しの演歌歌手のポスターや、マトリョーシカ、トロフィーなどが飾られている。どことなく、親戚の家のような、落ち着いた懐かしい雰囲気がある。
客同士は笑顔で談笑。ママやアルバイトレディはせっせと飲み物を作っている。テーブルの上には乾き物のほか、煮物やゆで卵、旬の果物が並ぶ。煮物はママのお手製だろうか。アットホームな雰囲気が感じ取れる。
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